今年で開園50周年を迎えた旭山動物園(北海道旭川市)と日本製紙北海道工場旭川事業所が、キリンとカバのうんちを原料に混ぜてノートなどの製造を始めた。
生産体制を整えるのに苦労したが、仕上がった製品は来園者に大人気で、生産が追いつかない状況だという。
旭川市パルプ町の工場敷地内の展示施設「紙遊館」。10人ほどの社員が、タンクに繊維と液体状のパルプを流し込む。2、3分すると抄紙機から次々と25センチ幅の紙が現れた。表面には細かくなった草が模様のようにちりばめられている。
完成した紙は、ノートやメモ帳、はがきに製品化され、動物園の売店に並ぶ。
B5判のノートは2冊で1080円(税込み)、メモ帳は540円(同)、はがきは2枚108円(同)とやや高価だが、7月の発売以降、子どもたちを中心に人気を集め、8月末までの2か月間に、製造した2487点が完売した。
同事業所は、同園が目玉とする「行動展示」の趣旨に賛同し、10年ほど前から収益の一部を寄付したり、雪解け時期に転倒防止用の砂を園内に散布したりして支援してきた。
開園50周年を迎える今年も、特別商品での後押しを検討。大型の草食動物のふんから採取した繊維を原料に、子ども向けの紙製品を作ったら面白いのでは、とアイデアが浮かんだ。衛生面から通常の生産ラインは使えなかったため、紙遊館に展示され、十数年休眠状態だった1962年製の抄紙機に白羽の矢を立てた。
故障が相次ぎ、修理に2か月ほど要したものの、今年2月、ふんから取り出した繊維を紙に5%ほど混ぜ込んで製造できるようになった。繊維は、ふんの中から取り出した草を圧縮し、乾燥させたもので、においはない。紙遊館の広瀬和由館長(65)は「こんなに古い機械が動くのは世界でここだけだろう」と、かつて工場を支えた往年の機械を誇らしげに見つめる。
今年度末までの限定販売で、ノートなどの表紙には、子どもたちの目を引くように旭山動物園で飼育されているカバの「百吉ももきち」やキリンの「結ゆい」をイメージした絵が愛嬌あいきょうたっぷりに描かれている。
ただ、原料は「百吉」や「結」が日々出してくれるふん次第で、稼働は月5、6日程度にとどまる。販売元の旭川振興公社は「大量生産はなかなか難しい」と少々悩ましげだ。(井上健人)
http://yomiuri.co.jp/economy/20170921-OYT1T50013.html