[東京 15日 ロイター] - 与党内の一部で、安倍晋三首相が今月下旬召集の臨時国会冒頭で、衆院解散に踏み切るのではないかとの観測が出ている。野党第一党・民進党の混迷や小池百合子東京都知事と連携する可能性のある勢力の新党結成作業が進んでいないことをにらみ、安倍首相が決断するとの思惑だ。
だが、15日に北朝鮮が日本上空を通過するミサイルを発射し、「政治空白」を作れないとの声も与党内に浮上。解散風はトーンダウンしているとみる声もある。
与党内の一部でささやかれているのは、「9月28日の臨時国会冒頭の衆院解散」と「10月22日投開票」もしくは「10月29日投開票」の日程だ。
当初、政府・与党内では、9月25日の臨時国会召集が有力視されていた。ところが、急に28日へと後ずれする方向となり、様々な観測を呼び起こすことになった。
その中の1つに「10月下旬の衆院選・投開票とすると時間がない。少しでも、時間的余裕を作るための後ずれではないか」(政府・与党関係者)との見方が出ていた。
ただ、早期解散の思惑には、いくつかの「伏線」があった。複数の与党関係者は1)内閣支持率が回復してきた、2)民進党が幹事長人事をめぐるスキャンダルなどに直面し、衆院選対策が後手に回っている、3)小池新党の設立への動きが鈍く、反自民の受け皿がない──など、自民党に有利な環境が急にそろってきた点を挙げる。
今年7月の東京都議選で歴史的大敗を喫した直後、自民党内には「早期解散アレルギー」がまん延していた。実際、党内では早期解散すれば、「東京都は全滅」「大阪府も厳しい」(自民党議員)といった悲観論が説得力を持つ地合いだった。
しかし、民進党は9月の前原誠司新代表による人事で、幹事長を巡って迷走。混乱ぶりを横目に離党者が続き、10月22日の3つの衆院補選準備の遅れが目立っていた。仮に衆院解散となった場合、他の野党との選挙協力に向けた作業が必要になるが、その準備作業は大幅に遅延しているもようだ。
さらに自民党に反発する有権者の有力な受け皿になると一部で見られていたいわゆる「小池新党」は、9月半ばになっても、その骨格は見えないまま。10月中に衆院選があった場合は、十分な対応が難しいのではないかとの「分析」も、一部の選挙通から出ていた。
こうした情勢の変化を受け、自民党内の一部では、安倍首相の周辺が解散の可能性を検討しているのではないか、との観測が浮上していた。実際、国内報道各社の9月の世論調査で、内閣支持率は前月比6%前後アップし、読売新聞の調査では支持率が5割台を回復した。
もっとも、与党内には早期解散慎重論も少なくない。「支持率は回復してきているが、不支持率が減らない。加計・森友問題も全く解決していない」(与党関係者)との声が漏れる。
また、民進党が衆院選で議席を減らしても、自民党に有利とはならず、組織力の強い共産党が躍進した場合、選挙後の政権運営は、現在よりもリスクが高くなるとの分析もある。
そこに北朝鮮によるミサイル発射という事態が飛び込んできた。自民党内には「北朝鮮情勢が緊迫し、安全保障環境が厳しさを増す中で、解散という政治空白を国民が許容するのか疑わしい」(関係者)との見方が浮上。党内のムードが変化する兆しも出てきた。
北朝鮮のミサイル発射情報を受け、インドからの帰途についていた安倍首相は、羽田空港への到着を早め、そのまま官邸に向かった。
果たして安倍首相がどのような判断を示すのか──。その答えは2週間以内にはっきりしそうだ。
配信2017年9月15日 / 19:43
ロイター
http://jp.reuters.com/article/abe-northkorea-dissolution-idJPKCN1BQ1A8