【脳を知る】日本で認知症が増える? 過剰に恐れるのはやめよう
産經新聞:2017.8.27 07:00更新
http://www.sankei.com/west/news/171222/wst1712220001-n1.html
テレビの健康番組などを見て、短絡的に認知症を過剰に恐れるのはやめよう
超高齢化社会を迎えた日本では、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると厚生労働省は推計しています。
このコラムでも、いやというほど「認知症が増加する!」と書きました。
しかし、近年、日本をはじめとするアジアで認知症患者が急増している一方で、欧米ではなんと認知症の有病率(ある時点における有病者の割合)が減ったという研究結果が相次いで発表されているのです。
米国や英国、オランダ、スウェーデンなどの研究では、この10年間で認知症が最大で10%も減少したとのことです。
その理由は何でしょうか? 認知症になる危険因子として最も重要なのは運動不足や心血管疾患につながる生活習慣病であることが分かってきたことと、それら生活習慣病の治療が大きく進歩したことが要因に挙げられます。
それと並んで欧米の研究で注目されているのは教育環境の改善です。
教育環境が認知症の発症に密接に関連することは以前から知られていました。
質の高い教育を受けると、健康情報への関心や理解力が高まり、自主的に認知症発症のリスクを回避した生活を送ろうと努力するようになるからです。
さらには健康診断の受診率が向上し、さまざまな疾患の危険因子となる生活習慣病の早期診断、早期治療につながると考えられます。
またその他にも、教育年数が長いほど脳の神経細胞が活性化されるので、認知機能の低下に歯止めをかけるのではないかとも考えられています。
では欧米と同様、日本でも今後、認知症の発症を抑えることができるのでしょうか。
実は日本でも多くの研究者が、認知症を減らすことは可能であると考えています。
先に述べたように、認知症の発症には加齢や遺伝的要因以外にも、運動不足や鬱病、中年期からの糖尿病や高血圧といった生活習慣病がリスクになることが明らかになっているので、
生活習慣病の早期治療や運動、対人交流の増加などが認知機能を改善することが期待できます。
そして何よりも欧米に負けず劣らず、日本には世界に誇る高い教育環境があるではないですか。
テレビの健康番組などを見て短絡的に、認知症を過剰に恐れるのはやめましょう。
認知症は生活習慣病の一つだと理解して、今すぐにでも適度な運動や知的活動の習慣づけ、バランスの取れた食事への配慮、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理を心がけましょう。
そして2025年、厚労省にあの推計は間違いでした、と言わせるように日々頑張っていきましょう。
(県立医科大学 脳神経外科准教授 小倉光博)
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