バードカフェの朝は早い。
なぜなら、気温が上がりすぎる前に
謹製おせちの仕込みを行う必要があるからだ。
「サンプル写真はいいんだけどね・・・。
グルーポンはマージン取りすぎて原価2000円でも駄目な時があるし、
料理名が難しすぎて、よくわからなかったりしてね・・・」
仕込みを終えた水口さんは我々との話を切り上げ、8Pチーズを握った。
8Pチーズをばらし、容器に詰めかえる。
速い。まるで料理人のようだ。
またたく間に一切れの8Pチーズを容器に詰めた。
息をつく間もなく次の重に取りかかり、また容器に8Pチーズが詰められる。
「どれ、今朝の調子はどうかな」
水口さんは厨房に放置した食材を一つ一つをつぶさに見る。
ひょいひょい、3つの箱から生ハムを取り出し手で触った。
もう腐敗臭が出ている。これは室温保存の効果なのだ。
「これは駄目。ほら、ちょっとここが固いでしょ。
3箇所も出るとは、もう正月が近いね。
今日くらいなら昼には問題なく詰め終えるけど、
これからもっと冷えてくると窓全開じゃないと辛いかな・・・」
この仕事は、時間との勝負。
本来調理人ではないアルバイトを、ここまでの作業に参加させるカリスマは、
水口さんを含めても全国に300,000人しかいない。
そして、こうやってテキトーに詰め替えられた調理済み食材が、
クール便ではない通常配送にて購入者のはらわたを煮えくりかえらせるのだ。
保健所が動き始めるまでに逃げ切れるか、時間の勝負である。
「550食、達成してみせますよ」
商売人の動きを見せる時とはうって変わり、とても穏やかな笑顔だ。
この笑顔に、株式会社外食文化研究所が支えられているのだ。