【医療】がん検診・早期治療、医師が口をつぐむ「寿命は延びない」という真実
日本人の2人に1人が生涯でがんになるといわれ、がんで死なないためには検診や早期発見・早期治療が大切だと多くの人が疑いもなく信じている。
そんな常識に異議を唱えるのが、2月に出版された『がん検診を信じるな 「早期発見・早期治療」のウソ』(宝島社新書/鳥集徹)だ。
そこで今回は、本書執筆者のジャーナリスト・鳥集氏に、がん検診と早期治療のデメリットや、それらを指摘する声が世間で広がりをみせない背景について話を聞いた。
――鳥集さんは本書のなかで、「がん検診を受けて、がんを早期発見・早期治療したとしても、命拾いできるとは限りません。
そればかりか、早期発見したがために無用な検査や治療を受けることになり、結果的に命を縮めることもあるのです」と書いています。
早期発見・早期治療が大切であるという見解が一般的ですが、何が問題なのでしょうか。
『がん検診を信じるな〜「早期発見・早期治療」のウソ』(鳥集徹/宝島社新書)
鳥集徹氏(以下、鳥集)
医学界全体としては早期発見・早期治療が大切であるという流れが支配的だと思いますが、
世界の動向を勉強している医師はがん検診に限界があることや、過剰診断が深刻であることに気づき始めています。
それは、エビデンス・ベースト・メディスン(EBM)、つまり「科学的根拠に基づく医療」を提供しなければならないと考える医師が増えたからだと思います。
元慶應義塾大学医学部講師の近藤誠医師が『患者よ、がんと闘うな』(文春文庫)など、がん検診を見直す一連の本を書き始めたのは1990年代ですが、その頃はまだ医師の間でもEBMの概念は知られていませんでした。
それに、がんは小さなサイズから段階的に大きくなっていくものだと大半の医師が思っていて、早く見つけて早く治療すれば、あるいはがん細胞の取り残しがないように大きく取れば治るはずだと思い込んでいました。
――アナウンサーの逸見政孝さんが93年にがんで亡くなった後だっただけに、近藤さんの問題提起は波紋を呼びましたね。
鳥集 ところが、ここ数年、欧米からいろいろな臨床試験の結果が出てきました。
欧米では1970年代から、がん検診を受けた人と受けない人を無作為に選んで、何万人もの人を対象に何十年も追跡し、その効果を科学的に検証してきたのです。
その結果、がん検診でもっとも効果が確実だと考えられるのが大腸がんの便潜血検査で、複数の臨床試験のデータを統合して解析した研究によると、死亡率が16%減るという結果でした。
――16%減れば一定の効果があるようにみえますが、どう評価すべきなのでしょうか。
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鳥集 16%は大きな数字に見えますが、1000人が15年間まじめに大腸がん検診を受け続けたとすると、大腸がんで6人死ぬはずが5人に減るといったぐらいの数字です。
つまり、15年間で1000人のうち1人の命を救うぐらいの効果しかないのです。
しかも、大腸がんによる死亡は1人減りますが、あらゆる要因で亡くなった人すべてをカウントする「総死亡率」で見ると、その効果はなくなってしまいます。
総死亡率で見ると効果がなくなる大きな理由は、手術や薬によるダメージで命を縮めてしまう人もいるので、早期発見・早期治療の効果が相殺されてしまうからだと考えられています。
こうした事実が国民に知らされていないことが一番の問題です。
がん検診は皆が思うほど効果がないことを、まずは知っておく必要があります。
http://biz-journal.jp/2017/08/post_20040.html ※続きます