ヘビの胴体はなぜ長いのか−。背骨を持つ脊椎動物の胴体の長さは「GDF11」というたった一つの遺伝子の働きによって変わることが名古屋大大学院理学研究科の鈴木孝幸講師、黒岩厚教授らのグループの研究で分かった。
脊椎動物の多様な進化の解明につながる成果。鈴木講師は「夏休み、動物園でいろいろな動物を見比べ、進化の過程に思いをはせてはいかが」と話す。
脊椎動物の背骨は、首の頸椎(けいつい)からしっぽの尾椎まで五つの部分に分かれる。このうち胸椎から腰椎までが胴体で、その次の仙椎の部分で後ろ足が作られる。
胴体の長さは後ろ足がどこにできるか、仙椎の位置が鍵を握るが、その仕組みは分かっていなかった。
グループは、初めにニワトリの胎児の成長過程を観察。将来、仙椎になる部分で、GDF11という遺伝子が働いていることを突き止めた。
実際に仙椎を形成するのは別の遺伝子だが、どの位置に作るかはGDF11が命令を出していた。
さらに胴体の長さが異なる九種類の動物の胎児で実験。胴体が短いカエルやカメでは、GDF11が仙椎の形成を命令する時期が早く、長い動物では遅かった。九種類のうち最も遅かったのが、最も胴体の長いヘビだった。
また、ヒヨコを使い、胴体の左右でGDF11が働く時期を変えたところ、早期に働かせた右側だけ胴体が短くなった。GDF11の機能を阻害したヒヨコは胴体が長くなった。
鈴木講師は「生物の形態の進化は少数の遺伝子の変化で起こる可能性がある。GDF11は他の臓器の位置関係を決めている可能性もあり、解明が進めば再生医療などにも役立つかもしれない」と話した。
成果は一日、英科学誌電子版に掲載された。(小椋由紀子)
GDF11が働くタイミング
配信 2017年8月1日 朝刊
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017080102000067.html
脊椎動物の多様な進化の解明につながる成果。鈴木講師は「夏休み、動物園でいろいろな動物を見比べ、進化の過程に思いをはせてはいかが」と話す。
脊椎動物の背骨は、首の頸椎(けいつい)からしっぽの尾椎まで五つの部分に分かれる。このうち胸椎から腰椎までが胴体で、その次の仙椎の部分で後ろ足が作られる。
胴体の長さは後ろ足がどこにできるか、仙椎の位置が鍵を握るが、その仕組みは分かっていなかった。
グループは、初めにニワトリの胎児の成長過程を観察。将来、仙椎になる部分で、GDF11という遺伝子が働いていることを突き止めた。
実際に仙椎を形成するのは別の遺伝子だが、どの位置に作るかはGDF11が命令を出していた。
さらに胴体の長さが異なる九種類の動物の胎児で実験。胴体が短いカエルやカメでは、GDF11が仙椎の形成を命令する時期が早く、長い動物では遅かった。九種類のうち最も遅かったのが、最も胴体の長いヘビだった。
また、ヒヨコを使い、胴体の左右でGDF11が働く時期を変えたところ、早期に働かせた右側だけ胴体が短くなった。GDF11の機能を阻害したヒヨコは胴体が長くなった。
鈴木講師は「生物の形態の進化は少数の遺伝子の変化で起こる可能性がある。GDF11は他の臓器の位置関係を決めている可能性もあり、解明が進めば再生医療などにも役立つかもしれない」と話した。
成果は一日、英科学誌電子版に掲載された。(小椋由紀子)
GDF11が働くタイミング
配信 2017年8月1日 朝刊
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017080102000067.html