関西電力の販売電力量の減少が止まらない。平成28年度は中部電力を下回り、通期として初めて業界3位に転落、29年度も大きく減少する見通しだ。
東日本大震災以降、省エネが定着し、昨年春の電力小売り完全自由化で他社に顧客を奪われ続けているためだ。巻き返しに値下げを打ち出しても、すぐに追随を受ける展開が続いている。(中山玲子)
■ダブルパンチ
顧客離れを食い止めるため、関電が電気料金の値下げを経済産業省に届け出た7月6日、岩根茂樹社長は厳しい表情を見せた。
「省エネと顧客の離脱で販売電力量は減っている。減少傾向は大きくなっている」
29年度の販売電力量は、前年度比71億キロワット時減の1144億キロワット時を想定しているという。ピーク時の22年度(1510億キロワット時)からの減少率は約25%という「深刻な状況」(関電首脳)だ。
東日本大震災から長らく続いた原発の停止で、電力不安が高まり、政府と関電は家庭や企業に節電を要請。料金値上げにより企業は、省エネを徹底した。
さらに昨年春には電力小売りが全面自由化され、利用者はより料金の安い新規参入事業者(新電力)を選べるようになった。
関電は現状打破をもくろむが、値下げは家庭で月180円ほど。どれほどの威力があるかは不明だ。
■ガスの攻勢
今年春には都市ガス小売りも全面自由化。電気とガスのセット販売で大阪ガスと全面的な顧客争奪戦に入った。
関電が電力を供給するのは約1千万件で、大ガスが都市ガスを供給するのは700万件と、大部分が重複する。これに対し、中部地方では中部電力が約1千万件に対して東邦ガス約230万件と4、5倍の差がある。
「関西は激戦区」(大手電力関係者)と言われるゆえんだ。
6月末時点で、関電からの大ガスなど新電力への顧客流出は約90万件(約8・9%)に対し、中部電では約36万件(約3・6%)にとどまる。
関西では原発の相次ぐ停止で関電の電気料金が2度にわたり値上げされたことも、新電力に攻め込む余地を与えた。
■値下げしても…
エネルギーの自由化では、商品の質に実質的な差がないため、競争は価格に行き着いてしまう。
大ガスに電力の顧客を奪われた関電は、反転攻勢へ都市ガス小売りに参入。昨年末にガス料金を発表した。すると、年明けに大ガスが新たなガス料金で対抗、関電は即座にさらに割安な料金を発表、とチキンレースの様相を呈している。
電気料金でも、大ガスは関電と同時期の8月1日に値下げをする。ほかの新電力も同程度の値下げを打ち出す構えだ。
関電は高浜原発3、4号機(福井県)に続いて大飯原発3、4号機(同)を再稼働させ、さらに値下げする方針だが、新電力が追随するのは必至。消耗戦は果てなく続きそうだ。
配信 2017.7.24 07:00更新
産経WEST
http://www.sankei.com/west/news/170724/wst1707240005-n1.html
東日本大震災以降、省エネが定着し、昨年春の電力小売り完全自由化で他社に顧客を奪われ続けているためだ。巻き返しに値下げを打ち出しても、すぐに追随を受ける展開が続いている。(中山玲子)
■ダブルパンチ
顧客離れを食い止めるため、関電が電気料金の値下げを経済産業省に届け出た7月6日、岩根茂樹社長は厳しい表情を見せた。
「省エネと顧客の離脱で販売電力量は減っている。減少傾向は大きくなっている」
29年度の販売電力量は、前年度比71億キロワット時減の1144億キロワット時を想定しているという。ピーク時の22年度(1510億キロワット時)からの減少率は約25%という「深刻な状況」(関電首脳)だ。
東日本大震災から長らく続いた原発の停止で、電力不安が高まり、政府と関電は家庭や企業に節電を要請。料金値上げにより企業は、省エネを徹底した。
さらに昨年春には電力小売りが全面自由化され、利用者はより料金の安い新規参入事業者(新電力)を選べるようになった。
関電は現状打破をもくろむが、値下げは家庭で月180円ほど。どれほどの威力があるかは不明だ。
■ガスの攻勢
今年春には都市ガス小売りも全面自由化。電気とガスのセット販売で大阪ガスと全面的な顧客争奪戦に入った。
関電が電力を供給するのは約1千万件で、大ガスが都市ガスを供給するのは700万件と、大部分が重複する。これに対し、中部地方では中部電力が約1千万件に対して東邦ガス約230万件と4、5倍の差がある。
「関西は激戦区」(大手電力関係者)と言われるゆえんだ。
6月末時点で、関電からの大ガスなど新電力への顧客流出は約90万件(約8・9%)に対し、中部電では約36万件(約3・6%)にとどまる。
関西では原発の相次ぐ停止で関電の電気料金が2度にわたり値上げされたことも、新電力に攻め込む余地を与えた。
■値下げしても…
エネルギーの自由化では、商品の質に実質的な差がないため、競争は価格に行き着いてしまう。
大ガスに電力の顧客を奪われた関電は、反転攻勢へ都市ガス小売りに参入。昨年末にガス料金を発表した。すると、年明けに大ガスが新たなガス料金で対抗、関電は即座にさらに割安な料金を発表、とチキンレースの様相を呈している。
電気料金でも、大ガスは関電と同時期の8月1日に値下げをする。ほかの新電力も同程度の値下げを打ち出す構えだ。
関電は高浜原発3、4号機(福井県)に続いて大飯原発3、4号機(同)を再稼働させ、さらに値下げする方針だが、新電力が追随するのは必至。消耗戦は果てなく続きそうだ。
配信 2017.7.24 07:00更新
産経WEST
http://www.sankei.com/west/news/170724/wst1707240005-n1.html