http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201707/CK2017071302000120.html
トランプ米大統領の就任後、米国で政治の世界を目指す女性が急速に増えている。欧州諸国に比べ女性の政治参加が遅れているとの危機感が根底にあるが、トランプ氏の女性蔑視的な発言や保守的な政策への反発が女性を政治に駆り立てるという「トランプ効果」も作用しているようだ。
▽寄付も増加
「ダニエラ・フォー・コングレス(ダニエラを議会に)をキーワードにして、ツイッターで発信しようよ。どんなメッセージが効果的かな」
六月下旬、首都ワシントンで開かれた女性政治家の育成イベント。厳しい選考を経て、全米から集まった約六十人の女子高生がグループに分かれて連邦下院議員の選挙運動を演習した。
候補者役のほか、広報戦略、政治資金調達などの担当を一人ずつ割り当て、真剣な議論を繰り広げる。かなり本格的な内容だ。
「もちろん政治家志望。でも最初は学校の生徒会とか、地域社会が抱える教育や育児の問題から取り組みたい」と話すのは、ロードアイランド州のジェナ・アンドレオッチさん(17)。候補者役だったメリーランド州出身のダニエラ・トレスさん(17)は中南米系だ。将来の進路は未定だが「人口の半分を占める女性の政治参加はとても重要。トランプ大統領の(排外的な)移民政策も気になる」と話す。
主催団体の「ランニングスタート」は超党派の立場から、若者を対象とした政治家育成プログラムを多数手掛け、これまで一万人以上を社会に送り出した。幹部のメリッサ・リッチモンドさん(30)は「寄付金も増える傾向にある。“トランプ効果”はありがたい」と笑顔を見せた。
▽希望者続々
女性政治家の育成団体が主催するプログラムは、参加希望者が軒並み増えている。民主党系の団体「エミリーズリスト」によると、昨年十一月の大統領選後、選挙への出馬を考えて同団体に接触した女性は一万五千人を超えた。
ただ列国議会同盟によると、米上下両院の女性議員比率は20%前後で、世界で百四位(日本は百六十三位)に低迷。有力シンクタンクは、米国の女性の政治参加はこの約二十年間停滞が続いていると分析する。
人工中絶問題などで保守的な政策を主張するトランプ政権に、特に否定的なのは民主党支持の女性だ。アメリカン大などが立候補を考えている人を対象に五月に実施した調査によると、初めて出馬を考えたのが過去六カ月以内と答えた人は、民主党支持の女性が28%。同党支持の男性(11%)や共和党支持の女性(8%)を大きく上回り、大統領選の結果に背中を押されたことを物語っている。 (ワシントン・共同)