明治40年以来、110年間も変わらなかったことが7月13日から変わります。性犯罪の厳罰化が盛り込まれた改正刑法が施行されたのです。
これまでの強姦罪が「強制性交等罪」に変更されて、被害者の告訴が無くても起訴できるようになりました。こうした点だけでなく、被害者の性別を問わないことになった点に注目する人たちがいます。
これまであまり表に出ることが無かったLGBT=性的マイノリティーや男性の性暴力の被害者です。今回の改正をどう受け止めているのでしょうか。
(ネットワーク報道部・宮脇麻樹記者)
■LGBTの性暴力被害の実態は
性的マイノリティーとしてこれまで性暴力の被害を受けても声をあげにくかったLGBTの人たち。あるレズビアンの女性が、その体験を伝えることで、被害者が少しでも声をあげやすくなるきっかけになればと、取材に応じてくれました。
青森県に住む女性は20代の頃、元交際相手からストーカー被害に遭い、家で待ち伏せされるなど悩んでいました。
ある日、相手から「今から家に行く」と連絡がありました。相手は家の前に到着すると「ドアを開けろ」とドアを叩いて大声を上げました。
当時住んでいたアパートの大家は勤め先の経営者だったため、騒ぎが聞こえると仕事に影響するかもしれないと考え、家に入れました。相手は復縁を執拗に要求し、そこで「レイプ」されたのです。
しかし加害者はトランスジェンダーの男性で、身体上は女性でした。女性は「警察に被害を訴えても理解してもらえないだけでなく、無知や偏見から嫌な思いをさせられるのではないか」と考えて誰にも言わず、夜逃げ同然に地元を離れたということです。
■改正刑法でも被害は「レイプ」とはならない
女性はいま青森県に戻り、地元の支援団体「レイプクライシス・ネットワーク」で相談員をしています。
今回の刑法改正には期待をしましたが、かつての加害者を罪に問えるようになったわけではなく、改正は不十分だと考えています。
その訳をつらそうに話してくれました。女性は、相手に指を使って襲われたのですが、男性器を挿入する行為でなければ「強制性交等罪」の対象にならないのです。
男性器の挿入以外の方法で被害にあうのは、LGBTの人たちに限ったことではありませんが、特に女性の同性間の場合は、男性器の挿入はあり得ず、何を挿入されたかによって、被害に差をつけるべきではないと考えています。「被害者の立場で考えたら、木の棒を入れられた時に、『男性器でなく、木の棒でよかったね』とはならない。このままでは、被害を訴えないままの人たちが出てくる」とこの女性は話しています。
■LGBTだから被害に遭う性暴力も
支援団体の代表の岡田美穂さんによると、ほかにもレズビアンやバイセクシュアルの女性などが、「矯正レイプ」と呼ばれる性暴力を受けることがあるそうです。
「男の良さを知らないからそうなんだ。自分が直してやる」などと言われて、性暴力を受けるというのです。
こうしたLGBTの被害者は、一般的な性暴力の相談機関に相談しても、対応してもらえないことが多いといいます。
岡田さんたちの団体に相談を寄せる被害者のうち半数近くは、他の相談機関に一回は連絡を取っているそうですが、「男性の被害は相談の対象外です」などと電話を切られたり、女性がレズビアンだと告げる前に、相談員から相手のことを「彼は」「彼氏は」と言われ続けると、被害を話せなくなってしまうと言います。
■”委員会の付帯決議の精神を生かして”
先月16日に刑法の改正案が参議院法務委員会で可決された際に、あわせて付帯決議が可決されています。
この中では、「『強制性交等罪』が被害者の性別を問わないものとなったことを踏まえ、被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程で、被害者となりうる男性や性的マイノリティーに対して偏見に基づく不当な取り扱いをしないことを研修などを通じて徹底させるよう」にと政府に注文を付けています。
LGBTの性暴力の被害者を支援している岡田さんは、「付帯決議に盛り込まれた内容のとおり、警察や相談機関などがきちんと研修を行って知識をもってもらわなければ、2次被害が起きる現状は変わらない」と懸念しています。
※続く 全文はソース先をお読み下さい
配信 7月13日 16時20分
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20170713/k10011056991000.html
これまでの強姦罪が「強制性交等罪」に変更されて、被害者の告訴が無くても起訴できるようになりました。こうした点だけでなく、被害者の性別を問わないことになった点に注目する人たちがいます。
これまであまり表に出ることが無かったLGBT=性的マイノリティーや男性の性暴力の被害者です。今回の改正をどう受け止めているのでしょうか。
(ネットワーク報道部・宮脇麻樹記者)
■LGBTの性暴力被害の実態は
性的マイノリティーとしてこれまで性暴力の被害を受けても声をあげにくかったLGBTの人たち。あるレズビアンの女性が、その体験を伝えることで、被害者が少しでも声をあげやすくなるきっかけになればと、取材に応じてくれました。
青森県に住む女性は20代の頃、元交際相手からストーカー被害に遭い、家で待ち伏せされるなど悩んでいました。
ある日、相手から「今から家に行く」と連絡がありました。相手は家の前に到着すると「ドアを開けろ」とドアを叩いて大声を上げました。
当時住んでいたアパートの大家は勤め先の経営者だったため、騒ぎが聞こえると仕事に影響するかもしれないと考え、家に入れました。相手は復縁を執拗に要求し、そこで「レイプ」されたのです。
しかし加害者はトランスジェンダーの男性で、身体上は女性でした。女性は「警察に被害を訴えても理解してもらえないだけでなく、無知や偏見から嫌な思いをさせられるのではないか」と考えて誰にも言わず、夜逃げ同然に地元を離れたということです。
■改正刑法でも被害は「レイプ」とはならない
女性はいま青森県に戻り、地元の支援団体「レイプクライシス・ネットワーク」で相談員をしています。
今回の刑法改正には期待をしましたが、かつての加害者を罪に問えるようになったわけではなく、改正は不十分だと考えています。
その訳をつらそうに話してくれました。女性は、相手に指を使って襲われたのですが、男性器を挿入する行為でなければ「強制性交等罪」の対象にならないのです。
男性器の挿入以外の方法で被害にあうのは、LGBTの人たちに限ったことではありませんが、特に女性の同性間の場合は、男性器の挿入はあり得ず、何を挿入されたかによって、被害に差をつけるべきではないと考えています。「被害者の立場で考えたら、木の棒を入れられた時に、『男性器でなく、木の棒でよかったね』とはならない。このままでは、被害を訴えないままの人たちが出てくる」とこの女性は話しています。
■LGBTだから被害に遭う性暴力も
支援団体の代表の岡田美穂さんによると、ほかにもレズビアンやバイセクシュアルの女性などが、「矯正レイプ」と呼ばれる性暴力を受けることがあるそうです。
「男の良さを知らないからそうなんだ。自分が直してやる」などと言われて、性暴力を受けるというのです。
こうしたLGBTの被害者は、一般的な性暴力の相談機関に相談しても、対応してもらえないことが多いといいます。
岡田さんたちの団体に相談を寄せる被害者のうち半数近くは、他の相談機関に一回は連絡を取っているそうですが、「男性の被害は相談の対象外です」などと電話を切られたり、女性がレズビアンだと告げる前に、相談員から相手のことを「彼は」「彼氏は」と言われ続けると、被害を話せなくなってしまうと言います。
■”委員会の付帯決議の精神を生かして”
先月16日に刑法の改正案が参議院法務委員会で可決された際に、あわせて付帯決議が可決されています。
この中では、「『強制性交等罪』が被害者の性別を問わないものとなったことを踏まえ、被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程で、被害者となりうる男性や性的マイノリティーに対して偏見に基づく不当な取り扱いをしないことを研修などを通じて徹底させるよう」にと政府に注文を付けています。
LGBTの性暴力の被害者を支援している岡田さんは、「付帯決議に盛り込まれた内容のとおり、警察や相談機関などがきちんと研修を行って知識をもってもらわなければ、2次被害が起きる現状は変わらない」と懸念しています。
※続く 全文はソース先をお読み下さい
配信 7月13日 16時20分
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20170713/k10011056991000.html