大手広告会社の電通(東京)が社員に違法な残業をさせていた事件で、東京地検が一両日中にも、労働基準法違反罪の両罰規定を適用して法人としての同社を略式起訴することが4日、関係者への取材で分かった。書類送検されていた男性幹部については刑事責任を問わず、不起訴処分(起訴猶予)とする方針。地検は山本敏博社長ら同社幹部を任意で事情聴取し捜査を進めてきたが、新入社員の過労自殺に端を発した事件の捜査はこれで終結する。
男性幹部は平成27年10〜12月、過労自殺した新入社員の高橋まつりさん=当時(24)=ら2人の社員に労使協定の上限を超える違法な残業をさせたとして昨年12月に書類送検されていた。
関係者によると、工場や飲食店などの従業員であれば、出退勤記録から労働時間を認定しやすいが、事務職やクリエーターなどの「ホワイトカラー」の場合、実稼働時間の精査が求められる。このため地検は、高橋さんら電通社員の出退勤記録だけでなく、パソコンのログイン時間などを精査し、違法残業の実態解明を進めてきた。
電通では、取引先などを呼んで接待する飲み会が定期的に実施され、新入社員が幹事を務めていた。飲み会後も反省会が開かれていたことが判明している。
厚生労働省の「過重労働撲滅特別対策班」(通称・かとく)はいずれも、個人の起訴を求める「厳重処分」の意見を付けて書類送検したが、「単に出社・退社時間をもって起訴するのは難しい」(検察幹部)事情があり、飲み会などの時間を残業と認定した上で、上司の関与を立証するのは困難と判断したもようだ。
事件をめぐっては、中部(名古屋市)、関西(大阪市)、京都(京都市)の各支社の幹部計3人と法人も書類送検されているが、名古屋、大阪、京都の各地検は起訴猶予にする方針。
3支社の幹部3人は27年10月〜28年10月、社員計5人に対し、最大月105時間の違法な長時間労働をさせたほか、本社が計10人の社員に違法労働をさせたとして書類送検されていた。
2017.7.5 07:11産経新聞
http://www.sankei.com/smp/affairs/news/170705/afr1707050004-s1.html