東ガス、関東の一部で6〜8%安く 東電連合に対抗
2017/6/27 15:39
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ27HDQ_X20C17A6000000/
東京ガスは27日、埼玉県と千葉県、茨城県の一部地域で、既存のガス会社より6〜8%安くなる電気・ガスのセット料金プランを発表した。対象となるのは中堅都市ガス会社、東彩ガス(埼玉県越谷市)と東日本ガス(千葉県我孫子市)のエリアだ。日本瓦斯の傘下のこの2社は東ガスからガスの卸供給を受けていたが、東ガスとの契約を打ち切って東京電ホールディングスに切り替えた。東ガスは対抗策として、かつてのお得意様のエリアに参入することを決定。東電・日ガス連合との仁義なき戦いに打って出る。
「価格やサービスで選んでもらえる料金プランを新規エリアでぶつけてみたい」。東京ガスの奥村栄吾・リビング営業計画部長は同日の記者会見で意気込みを語った。当面は東ガス本体の社員が当該エリアに直接営業し、将来は周辺にある系列ガス器具販売店とも連携する。水回りやカギのトラブルに対応するサービスなども展開する。
4月に始まった都市ガス小売りの全面自由化では、日ガスや東電などが東ガスのエリアに参入できるだけでなく、東ガスも中堅都市ガスのエリアに参入できるようになった。東ガスは今回、他社の供給エリアに初めて乗り込む。
7月中旬から、ガス使用量が多い顧客を中心に、日ガス系よりも料金を4〜5%安くする。電力・ガスのセットなら最大で6〜8%安くなる。例えば東彩ガスのエリアに住む3人家族が電気・ガスセットで契約すると、ポイントサービスも含めて年間1万6200円安いという。対象となる需要家件数は合計で約27万件だ。
首都圏で1100万件の都市ガス契約を持つ最大手の東ガス。顧客数が50分の1しかない中堅ガスのエリアに殴り込みをかけるのは、自由化を機に「一瞬で30万件分の契約を失った」(同社幹部)からだ。
東ガスは関東に都市ガスの卸供給先が20社ある。原料である液化天然ガス(LNG)を輸入して中堅ガス会社に卸供給するビジネスは、重要な収益源の1つ。東ガスには、卸先のお膝元では小売りの営業はしないという暗黙の「不可侵条項」があった。
ところが昨年、日ガスが今回の2社を含め、都市ガスの卸供給元を東ガスから東電に切り替えることを公表。東ガスは4月に30万件相当の卸供給契約を失い、その契約がライバルの東電にごっそり移ってしまった。
日ガスはすでに東ガスから4万件ほどの契約を奪い、7月からは東電も都市ガス小売りを始める。危機感を募らせた東ガスは、かつて卸供給していた「お得意様」のエリアに参入し、顧客を奪い返すことを決めた。
関西では、新規参入の関西電力と既存大手の大阪ガスが顧客争奪戦で激しく火花を散らしているが、他の地域は総じて低調だ。東ガスが動き出すことで、関東でも競争に火が付くかに注目が集まる。
(志賀優一)