<千葉市長選 県都の課題>(下)市財政の健全化 借金1兆円、厳しさ続く
東日本大震災から六年が経過し、多くの自治体で庁舎の耐震化が進む中、政令指定都市の千葉市は、
大規模災害が起きた際に「総合防災拠点」となる本庁舎の耐震化の時期を示せていない。
本庁舎を建て替えた場合の総事業費は約三百億円。市債残高(借金)が一兆百八十一億円(二〇一五年度決算)に上る中、
新庁舎整備の財源をどう確保するかが課題となっている。
本庁舎は築四十七年。東日本大震災の際には壁や床が壊れるなどの被害があった。
市はこれまでに約三十六億四千万円を「市庁舎整備基金」として積み立ててきた。
だが、このうち三十五億四千万円を一般会計に繰り入れており、残高は一億円しかない。
市は今年秋までに新庁舎の基本設計を終え、年内にも建設時期を決めたいとしている。
財源確保に向けては今後、民間に資金調達を委ねるPFI方式などを導入した場合の効果を調査する方針だという。
千葉市中央区でカフェ・ギャラリーを営む野口由布子(ゆうこ)さん(47)は「今の市役所の建物では危険だと思う。
利便性が良ければ立派な建物はいらない。災害時に街を守る機能だけは整備してほしい」と訴える。
市がこのような厳しい財政状況になったのは、一九九二年四月の政令指定都市移行後、道路や公園などの都市基盤の
積極的な整備を進めてきたためだ。それらの財源確保のため市債発行額が増え、九二年に三千六百八十二億円だった市債残高は、
〇八年には一兆八百九億円にまで膨らんだ。
市は〇九年十月、「脱・財政危機宣言」を出して財政健全化策を強化した。緊急性の低い公共事業を見直し、
新たな借金をできるだけ作らないようにした。市職員の給与もカット。高齢者向けの敬老祝い金は、七十七歳と八十八歳への支給を廃止し、
九十九歳に限った。
宣言後、市は毎年百億円以上の借金を減らし、市民一人当たりに換算すると、一〇年度の百十三万円から一五年度に百六万円に減った。
だが、市財政課は「危機的状況は脱却しつつあるが、依然として厳しい状況に変わりはない」とする。
淑徳大の矢尾板俊平准教授(総合政策)は、市債残高のうち、地方交付税の財源不足を補うために自治体が借金をして国が返す
「臨時財政対策債」の割合が二割を超えている現状に警鐘を鳴らす。「国は後で必ず交付税で返すと言うが、リスクがある。
市がいくら借金を減らす努力をしても、市民の将来への不安は消えない」と指摘する。
その上で、「いかに国に頼らず資金を調達するかが重要になる。民間資金を活用したり、市民に協力を呼び掛けて“市民債”を発行するなど、
市民と協働して事業を行う道を探るべきだ」と提言する。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201705/CK2017051402000136.html?ref=rank