・格ゲー業界騒然!パキスタン人が異様に強い理由、現地で確かめてみた
今年2月、強豪ひしめく格闘ゲームの世界大会で、無名のパキスタンの若者が「番狂わせ」の優勝を果たした。さらに業界を騒然とさせたのは優勝後に放った一言。「パキスタンには強い選手が、まだまだいる」。まるで漫画のような展開。真偽を確かめるため訪れた現地で待っていたのは「ラホールの強心臓」「コンボの魔術師」「青シャツの神童」などの猛者たちだった……。ネットゲームの時代、わざわざゲーセンに通う理由。宗教指導者に「がん見」されながら腕を磨くそこはまさに「虎の穴」。パキスタンでいったい何が起きているのか。真相を探った。(朝日新聞イスラマバード支局長・乗京真知)
行きつけの「道場」
1千万人超が暮らすパキスタン東部ラホール。砂ぼこりが舞う大通りを2人乗りのバイクが競うように走り抜けていく。流行をいち早く取り入れる学生や商魂たくましい起業家が集まる国内有数の商都だ。
「市内に行きつけのゲームセンターがあります。そこで落ち合いましょう」。人気の格闘ゲーム「鉄拳7」の世界大会(今年2月、福岡)を制したアルスラン・アッシュさん(23)。彼の「道場」とも言えるゲームセンターは、クラクションの音が鳴り響く幹線道路沿いの雑居ビルに入っていた。
バイク修理工場や雑貨屋が入るビルの1階。エンジンオイルのにおいが漂う。通路の奥まで進むと、ゲーム機の効果音が聞こえてきた。ゲームセンター「マニアックス」。店主のザミン・アッバスさん(34)が顔を出し、「日本からですか?なんて光栄な」と招き入れてくれた。照明を落とした店内は20畳ほどの広さで、ゲーム機は計10台。ラホールでは最大の規模だという。日が沈むころ、腕に自信のある若者たちが20人ほど集まってきた。
「これ才能?」気づいた反射神経
アルスランさんもバイクで駆けつけた。「お待たせしました。ちょっと遅れちゃいました」。人なつっこい笑顔で、右手をさしのべた。わずかな遅刻でも、律義にわびる好青年だ。少し前にイスラム教徒の悲願であるメッカ巡礼に行ってきたとのことで、髪をきれいに刈り上げていた。
ゲームセンターの中にあるソファで、アルスランさんの話を聞いた。格闘ゲームにはまったのは2008年頃。12歳のときだった。立ち寄ったゲームセンターで見た格闘映像の鮮やかさに衝撃を受けた。当時は国産アニメもない時代。3次元のキャラクターが、自分の指示通りに動く世界観にのめり込んだ。
コントローラーの操作を覚えると、すぐに成績が付いてきた。自分の反射神経が抜きんでていることを、思いがけず発見した。キャラクターの動きが、友人たちより数段速かったからだ。「これはギフト(授けられた才能)なのかもしれない」と思い始めた。
家にはゲーム機もパソコンもなかった。ゲームセンターだけが練習の場だった。毎日5時間、放課後に通った。3ゲーム先取のゲーム代は10ルピー(約8円)。負けた方が払うルールで、強くなるほど出費は減った。試合前は練習時間を8時間ほどに増やした。4年後の2012年に全国大会で初優勝したのを皮切りに、2018年までに地方大会も含めて計40回ほどお立ち台に立ったという。
対戦フォームは「ピアニスト」
特徴的なのは、その指づかいだ。パンチやキックを繰り出すためには、右手でボタンを正確に押せるかが鍵となる。ボタンを押し間違えないよう、指の腹でパンパンと強く押したくなるところだが、アルスランさんは指をほとんど動かさない。
代わりに指を立て、ピアノでも弾くように優しくトントンとボタンを押す。手首を1センチほど上下させるだけで、指は固定されている。
また、キャラクターを前後左右に動かす左手のレバーも、動きこそ小刻みで素早いが、軽く握る程度で腕に力みはない。肩を張らず、背筋を伸ばし、目線がぶれない。プレー中は、まばたきさえも極端に減る。
>>2
※全文はリンク先へ
(画像)
2019年04月17日https://withnews.jp/article/f0190417002qq000000000000000W08510101qq000019048A
今年2月、強豪ひしめく格闘ゲームの世界大会で、無名のパキスタンの若者が「番狂わせ」の優勝を果たした。さらに業界を騒然とさせたのは優勝後に放った一言。「パキスタンには強い選手が、まだまだいる」。まるで漫画のような展開。真偽を確かめるため訪れた現地で待っていたのは「ラホールの強心臓」「コンボの魔術師」「青シャツの神童」などの猛者たちだった……。ネットゲームの時代、わざわざゲーセンに通う理由。宗教指導者に「がん見」されながら腕を磨くそこはまさに「虎の穴」。パキスタンでいったい何が起きているのか。真相を探った。(朝日新聞イスラマバード支局長・乗京真知)
行きつけの「道場」
1千万人超が暮らすパキスタン東部ラホール。砂ぼこりが舞う大通りを2人乗りのバイクが競うように走り抜けていく。流行をいち早く取り入れる学生や商魂たくましい起業家が集まる国内有数の商都だ。
「市内に行きつけのゲームセンターがあります。そこで落ち合いましょう」。人気の格闘ゲーム「鉄拳7」の世界大会(今年2月、福岡)を制したアルスラン・アッシュさん(23)。彼の「道場」とも言えるゲームセンターは、クラクションの音が鳴り響く幹線道路沿いの雑居ビルに入っていた。
バイク修理工場や雑貨屋が入るビルの1階。エンジンオイルのにおいが漂う。通路の奥まで進むと、ゲーム機の効果音が聞こえてきた。ゲームセンター「マニアックス」。店主のザミン・アッバスさん(34)が顔を出し、「日本からですか?なんて光栄な」と招き入れてくれた。照明を落とした店内は20畳ほどの広さで、ゲーム機は計10台。ラホールでは最大の規模だという。日が沈むころ、腕に自信のある若者たちが20人ほど集まってきた。
「これ才能?」気づいた反射神経
アルスランさんもバイクで駆けつけた。「お待たせしました。ちょっと遅れちゃいました」。人なつっこい笑顔で、右手をさしのべた。わずかな遅刻でも、律義にわびる好青年だ。少し前にイスラム教徒の悲願であるメッカ巡礼に行ってきたとのことで、髪をきれいに刈り上げていた。
ゲームセンターの中にあるソファで、アルスランさんの話を聞いた。格闘ゲームにはまったのは2008年頃。12歳のときだった。立ち寄ったゲームセンターで見た格闘映像の鮮やかさに衝撃を受けた。当時は国産アニメもない時代。3次元のキャラクターが、自分の指示通りに動く世界観にのめり込んだ。
コントローラーの操作を覚えると、すぐに成績が付いてきた。自分の反射神経が抜きんでていることを、思いがけず発見した。キャラクターの動きが、友人たちより数段速かったからだ。「これはギフト(授けられた才能)なのかもしれない」と思い始めた。
家にはゲーム機もパソコンもなかった。ゲームセンターだけが練習の場だった。毎日5時間、放課後に通った。3ゲーム先取のゲーム代は10ルピー(約8円)。負けた方が払うルールで、強くなるほど出費は減った。試合前は練習時間を8時間ほどに増やした。4年後の2012年に全国大会で初優勝したのを皮切りに、2018年までに地方大会も含めて計40回ほどお立ち台に立ったという。
対戦フォームは「ピアニスト」
特徴的なのは、その指づかいだ。パンチやキックを繰り出すためには、右手でボタンを正確に押せるかが鍵となる。ボタンを押し間違えないよう、指の腹でパンパンと強く押したくなるところだが、アルスランさんは指をほとんど動かさない。
代わりに指を立て、ピアノでも弾くように優しくトントンとボタンを押す。手首を1センチほど上下させるだけで、指は固定されている。
また、キャラクターを前後左右に動かす左手のレバーも、動きこそ小刻みで素早いが、軽く握る程度で腕に力みはない。肩を張らず、背筋を伸ばし、目線がぶれない。プレー中は、まばたきさえも極端に減る。
>>2
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(画像)
2019年04月17日https://withnews.jp/article/f0190417002qq000000000000000W08510101qq000019048A