中国北東部の吉林省の省都、長春とウラジオストクを結ぶ高速鉄道は完成さえすれば、中国とロシアとの友好関係の立派な象徴になるだろう。中国を走る部分は現代的な素晴らしい出来だ。シラカバの林と赤い屋根の建物が目立つ農場といった風景の中を猛スピードで滑らかに走り抜けていく。だがロシアと国境を接する街、吉林省琿春で途切れてしまう。
琿春市は人口は23万人足らずの殺風景な街だが、人の温かみが感じられる。住民らは当初、長春を起点とする高速鉄道の終点がなぜ琿春なのかについて話したがらなかった。420億元(約6900億円)を投じたこの高速鉄道が開通したのは2015年。公的記録には、吉林省がロシア極東の最大の港湾都市ウラジオストクまで高速鉄道で結ぼうとロシアに協力を呼びかけたと書かれている。琿春の人々は、実現しなかったのはロシア側の利己主義のせいだとこぼす。この地のある中国人経営者は「『そちらが(高速鉄道が)あればいいと思うなら、自分たちで建設すればいい』とロシアが言ったんだ」と話し、ロシア側まで高速鉄道が走るようになるには20年かかるだろうと鼻で笑った。
中国人とロシア人が日常的に交わるところでも、一般の中国人がロシア人をどう思っているかを知るには琿春はよい場所だ。店やホテルにはロシア語の表示が目立つ。街の診療所は、治療目的でシベリアからくるロシア人観光客で潤っている。琿春のある歯科医は、ロシア人の歯は「あまりよくない」と遠回しに言った。(編集注、ひどい、ということ)
核実験で国連の制裁を受けた北朝鮮からカニを輸入できなくなって以来、地元の水産物業者はロシアから買い付けているが、不信感ものぞく。水産物販売業を営むラン・ユリン氏は、ロシア側の手続きのせいでウラジオストクから琿春まで陸路300キロの輸送に5日もかかると不満だ。しかもロシアの取引先は平日遅い時間や週末は決して対応せず、「どんなに貴重な商機を失うことになっても気にもかけない」と言う。
琿春市街から車で1時間ほど南下した所にある防川は、同市の主な観光地で、中国の愛国感情をかき立てる。1860年にロシア帝国が弱体化した清朝につけ込み、沿岸部を奪取した。そのために吉林省はほんの15キロ先にある海へのアクセスを失い、以来、防川は中国とロシア、北朝鮮の3カ国が国境を接する地となった。四川省から来ていたある観光客は「中国は今や強い国だ」と語り、あのような事態が繰り返されることはないはずだと続けた。
中ロの経済的関係は長年、期待外れに終わってきた。中国政府の研究機関である中国社会科学院の研究員、シン・グワンチェン氏によると、ロシアから中国への天然ガスや木材などの天然資源の輸出は増えているが、両国間の貿易総額は中ロの首脳が決めた目標を下回っている。
両国民が親密になれないのは貿易の伸び悩みが一因だ。ロシア研究に長年専念してきたシン氏ですらその説明を求められると、こう答えた。中国人は資源に恵まれず人口が多い競争社会に身を置くため勤勉だが、ロシア人は広大な土地と豊かな資源に恵まれ、生活ものんびりしていて違う、と。同氏の話では、ロシア極東で中国人が農地を借りて、夜明け前から日暮れ後まで働くと驚かれるという。そうした中国人が手早く昼食を済ませていると、ロシア人が何人も寄ってきて「なぜそれほど一生懸命働くのか」と尋ねるそうだ。また、シベリア半島に農場を持つロシア人は、中国人は農薬を使いすぎるという。
>>2
2018年12月12日 2:00 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO3878739011122018TCR000
琿春市は人口は23万人足らずの殺風景な街だが、人の温かみが感じられる。住民らは当初、長春を起点とする高速鉄道の終点がなぜ琿春なのかについて話したがらなかった。420億元(約6900億円)を投じたこの高速鉄道が開通したのは2015年。公的記録には、吉林省がロシア極東の最大の港湾都市ウラジオストクまで高速鉄道で結ぼうとロシアに協力を呼びかけたと書かれている。琿春の人々は、実現しなかったのはロシア側の利己主義のせいだとこぼす。この地のある中国人経営者は「『そちらが(高速鉄道が)あればいいと思うなら、自分たちで建設すればいい』とロシアが言ったんだ」と話し、ロシア側まで高速鉄道が走るようになるには20年かかるだろうと鼻で笑った。
中国人とロシア人が日常的に交わるところでも、一般の中国人がロシア人をどう思っているかを知るには琿春はよい場所だ。店やホテルにはロシア語の表示が目立つ。街の診療所は、治療目的でシベリアからくるロシア人観光客で潤っている。琿春のある歯科医は、ロシア人の歯は「あまりよくない」と遠回しに言った。(編集注、ひどい、ということ)
核実験で国連の制裁を受けた北朝鮮からカニを輸入できなくなって以来、地元の水産物業者はロシアから買い付けているが、不信感ものぞく。水産物販売業を営むラン・ユリン氏は、ロシア側の手続きのせいでウラジオストクから琿春まで陸路300キロの輸送に5日もかかると不満だ。しかもロシアの取引先は平日遅い時間や週末は決して対応せず、「どんなに貴重な商機を失うことになっても気にもかけない」と言う。
琿春市街から車で1時間ほど南下した所にある防川は、同市の主な観光地で、中国の愛国感情をかき立てる。1860年にロシア帝国が弱体化した清朝につけ込み、沿岸部を奪取した。そのために吉林省はほんの15キロ先にある海へのアクセスを失い、以来、防川は中国とロシア、北朝鮮の3カ国が国境を接する地となった。四川省から来ていたある観光客は「中国は今や強い国だ」と語り、あのような事態が繰り返されることはないはずだと続けた。
中ロの経済的関係は長年、期待外れに終わってきた。中国政府の研究機関である中国社会科学院の研究員、シン・グワンチェン氏によると、ロシアから中国への天然ガスや木材などの天然資源の輸出は増えているが、両国間の貿易総額は中ロの首脳が決めた目標を下回っている。
両国民が親密になれないのは貿易の伸び悩みが一因だ。ロシア研究に長年専念してきたシン氏ですらその説明を求められると、こう答えた。中国人は資源に恵まれず人口が多い競争社会に身を置くため勤勉だが、ロシア人は広大な土地と豊かな資源に恵まれ、生活ものんびりしていて違う、と。同氏の話では、ロシア極東で中国人が農地を借りて、夜明け前から日暮れ後まで働くと驚かれるという。そうした中国人が手早く昼食を済ませていると、ロシア人が何人も寄ってきて「なぜそれほど一生懸命働くのか」と尋ねるそうだ。また、シベリア半島に農場を持つロシア人は、中国人は農薬を使いすぎるという。
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2018年12月12日 2:00 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO3878739011122018TCR000