英国でもキャッシュレス化が進むなか、ホームレスの人々が危機感を募らせている。「ごめんなさい、お金はもっていないの」──。そんな言葉はホームレスだけでなく、移民や低所得者層といった既存の金融システムの外側にいる社会的弱者にとって、極めて大きな意味をもち始めた。
ナタリーには気づいたことがあった。「小銭をもっていないんです」と謝られることが次第に増えてきたのだ。「かつては恵んでいただくことが多かったと思います。当時の夏は、今年の冬より収入が多かったですね」とナタリーは言う。
「冬場はほかの季節より思いやりをいただくことがずっと多いものなんです。雪が降っていて、寒空のもとにいるのがはっきりわかるから。今回は12月からホームレスの状態になったんですが、ずいぶん収入が少なかったです。それはもう、散々な結果ですよ」
英国ではATMが毎月300ずつ姿を消している。かつて銀行支店の閉鎖を食い止めるためにATMが導入された比較的貧しい田舎の地域は、特に影響が大きい。2006年には英国における支払いの62パーセントが現金だったが、今日では現金の支払いは40パーセントにすぎない。2026年には21パーセントまで低下すると予想されている。
きちんとしたベッドがなく、見知らぬ人の厚意に頼って生活するホームレスの人々にとって、小銭が消えていくことは火急の事態だ。ナタリーをはじめとする英国内に30万人いるホームレスの人々は、すでに困難に直面している。
テクノロジーの活用はホームレスらしくない?
現金の使用が減っていく間に、ホームレスの人々はどのような状況に置かれることになるのだろうか。雑誌『ビッグイシュー』の販売人のなかにも、iZettleやSum Upなどの決済端末を導入している人がいる。しかし、これにはこれで問題があるのだと販売員のマーティンは言う。
「売り手の一部にはカードリーダーを導入している人もいます。でも、それには銀行口座が必要で、その銀行口座をつくるには住所とIDが必要なんですよ。さらにはネット接続環境もいるんですが、(雑誌の販売に)Wi-Fiを使える場所を確保するのはとても難しいんです」
1998年に雑誌販売を始めたころは、商売を始めるのに必要なものは名前以外には何もなかった。いまや状況は一変してしまった。「最近はもう、世知辛い世のなかになってしまいました」
テクノロジーの活用がホームレスらしくないと見られてしまう一般的な状況を鑑みると、カードリーダーを使うことが裏目に出ることもあるようだ。
「貧困はテクノロジーの欠如と結びつけられるものなのです」と、金融自動化の専門家であり運動家でもあるブレット・スコットは言う。「そしてそれは、人が誰かを困窮していると判断する根拠の一部なのです」。カードリーダーのような電子機器の存在によって、ホームレスの人々に対する印象も変化するのだという。
事実上のキャッシュレス社会といえる中国においてさえそうだ。支払いにQRコードを導入しているホームレスの人々は、「人気の観光地に出没」して犯罪者の手先として支払い情報を読み取り、WeChatのIDを売りさばく片棒を担いでいるとの誹りを受けている。難民がスマートフォンを所持していると非難を受ける地域があるように、ホームレスの人々がクレジットカードを導入することにはリスクが伴う。
※続きはリンク先で
2018/09/09/ WIRED JP
https://wired.jp/2018/09/09/cashless-society-uk-homeless/
ナタリーには気づいたことがあった。「小銭をもっていないんです」と謝られることが次第に増えてきたのだ。「かつては恵んでいただくことが多かったと思います。当時の夏は、今年の冬より収入が多かったですね」とナタリーは言う。
「冬場はほかの季節より思いやりをいただくことがずっと多いものなんです。雪が降っていて、寒空のもとにいるのがはっきりわかるから。今回は12月からホームレスの状態になったんですが、ずいぶん収入が少なかったです。それはもう、散々な結果ですよ」
英国ではATMが毎月300ずつ姿を消している。かつて銀行支店の閉鎖を食い止めるためにATMが導入された比較的貧しい田舎の地域は、特に影響が大きい。2006年には英国における支払いの62パーセントが現金だったが、今日では現金の支払いは40パーセントにすぎない。2026年には21パーセントまで低下すると予想されている。
きちんとしたベッドがなく、見知らぬ人の厚意に頼って生活するホームレスの人々にとって、小銭が消えていくことは火急の事態だ。ナタリーをはじめとする英国内に30万人いるホームレスの人々は、すでに困難に直面している。
テクノロジーの活用はホームレスらしくない?
現金の使用が減っていく間に、ホームレスの人々はどのような状況に置かれることになるのだろうか。雑誌『ビッグイシュー』の販売人のなかにも、iZettleやSum Upなどの決済端末を導入している人がいる。しかし、これにはこれで問題があるのだと販売員のマーティンは言う。
「売り手の一部にはカードリーダーを導入している人もいます。でも、それには銀行口座が必要で、その銀行口座をつくるには住所とIDが必要なんですよ。さらにはネット接続環境もいるんですが、(雑誌の販売に)Wi-Fiを使える場所を確保するのはとても難しいんです」
1998年に雑誌販売を始めたころは、商売を始めるのに必要なものは名前以外には何もなかった。いまや状況は一変してしまった。「最近はもう、世知辛い世のなかになってしまいました」
テクノロジーの活用がホームレスらしくないと見られてしまう一般的な状況を鑑みると、カードリーダーを使うことが裏目に出ることもあるようだ。
「貧困はテクノロジーの欠如と結びつけられるものなのです」と、金融自動化の専門家であり運動家でもあるブレット・スコットは言う。「そしてそれは、人が誰かを困窮していると判断する根拠の一部なのです」。カードリーダーのような電子機器の存在によって、ホームレスの人々に対する印象も変化するのだという。
事実上のキャッシュレス社会といえる中国においてさえそうだ。支払いにQRコードを導入しているホームレスの人々は、「人気の観光地に出没」して犯罪者の手先として支払い情報を読み取り、WeChatのIDを売りさばく片棒を担いでいるとの誹りを受けている。難民がスマートフォンを所持していると非難を受ける地域があるように、ホームレスの人々がクレジットカードを導入することにはリスクが伴う。
![【イギリス】消えゆく小銭に危機感を抱くホームレスの人々 [09/09] ->画像>6枚](https://wired.jp/wp-content/uploads/2018/08/gettyimages-629476706-e1535709141810.jpg)
※続きはリンク先で
2018/09/09/ WIRED JP
https://wired.jp/2018/09/09/cashless-society-uk-homeless/