EU離脱で英語学校、生徒減不安 日本など開拓に力
2016年の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国で、英語語学学校が先行きに不安を募らせている。EU圏内から受け入れている年間20万人以上の生徒が、離脱でEUと自由に行き来することができなくなる可能性が高いためだ。想定されるEU圏内からの生徒減に対応すべく、てこ入れを図るのはEU圏外の生徒獲得。日本市場もターゲットのひとつで、日本語を話すスタッフを増員する語学学校もある。
「政府は早く人の移動の自由を巡る方針を決めてほしい」。ロンドン北部の英語学校ナセル・イングリッシュスクールのアナベラ・バロス代表は不安げに話す。国民投票では、移民の規制を求める民意が強く反映された。メイ首相は「人の移動の自由は制限する」と繰り返し明言しているが、ビザが必要となるケースなど詳細は決まっていない。
同校の生徒の半数はEU加盟国から。そのため、仲介業者を使って南米ブラジルなどからの生徒の開拓に力を入れている。日本も有力な市場だ。九州地方の高校からも生徒を受け入れ始めた。日本語を話せるスタッフも2人配置。日本人生徒の割合を今の約10%からさらに増やす計画だ。
正式離脱が来年3月に迫るなか、今はEU加盟の東欧諸国から駆け込みで渡英する生徒が増えている。離脱前に英国に移り住めば、住み続けることができるためだ。今年6月にスロバキアからロンドンに移り住み同校で学ぶスザンナさん(35)は大手スーパーのマネジャーの職をなげうっての渡英。「マネジャーの給与では生活が苦しかった。英語を身につけ、英国で職を見つけてここで暮らしたい」と話す。
英国の語学学校の全国組織「イングリッシュUK」によると、17年の生徒数は約45万人でEU圏内からの割合は61%。東欧からの駆け込み需要や離脱を巡る不安によるポンド安に支えられ、全生徒数は15年に比べ約3万7000人増えてはいるものの、正式離脱の先は見通せない。
「イングリッシュUK」は英政府や議会に対し、従来通りEU圏内の人が自由に英国に学びに来ることができるようロビー活動を行っている。サラ・クーパー代表は「仕事を探すために学びに来ている成人も多く、深刻な影響を受ける。政府側と議論を続けていく」と説明する。
毎日新聞 2018年8月7日
https://mainichi.jp/articles/20180808/k00/00m/030/130000c