極小マイクロチップは米粒ほどの大きさながら、
日常生活の多くの場面で必要となる重要なデータを格納することができる。
皮膚の下に埋め込まれた極小マイクロチップがあれば、鍵やクレジットカード、
電車の切符などを携帯する手間もなくなるだろう。
一部の人々にとってみれば、
これは英作家ジョージ・オーウェル(George Orwell)が描いた監視社会的な悪夢に聞こえるかもしれないが、
スウェーデンでは個人情報漏えいのリスクよりも便利さを好む人々が増えており、歓迎される現実となっている。
移植用の極小マイクロチップは、スウェーデンでは2015年に初めて使用された。当初そのことは公にされていなかった。
だが最新技術に敏感で、個人情報の共有が透明性の高い社会の証として支持されている同国では、
使用をめぐる問題についての議論が十分にされないまま、マイクロチップの移植が非常に積極的に進められている。
ウルリカ・セルシング(Ulrika Celsing)さん(28)は新しいライフスタイルを試すため、
手にマイクロチップを埋め込んだスウェーデン国民3000人のうちの一人だ。
職場のメディアエージェンシー「マインドシェア(Mindshare)」に出勤する際には、
小さい箱に手をかざし、暗証番号を入力するだけで扉を開けることができる。
セルシングさんは、AFPの取材に対し「新しいものを試し、
それを使えば生活はもっと便利になるかもしれないと思うのは楽しい」と話した。
■情報の共有
スウェーデンでは、個人情報の共有は古くから存在し、そのことが、
国民1000万人の間にマイクロチップを受け入れやすい土壌を形成する一因となっているのかもしれない。
国民は社会保障制度やその他、行政機関に登録された個人情報の共有を長年受け入れている。
だがその一方で、税務当局に電話で問い合わせるだけで他人の給与額を知ることもできてしまう。
■「再考の必要性も否定できず」
セルシングさんは、
勤務先の革新的なメディア企業がマイクロチップの移植を受けられる従業員向けのイベントを開催した際、
多数の参加者の輪に加わった。
特に何も感じなかったという彼女だが、
左手に注射器でチップを埋め込まれた時には少しちくっとしたという。
彼女は今、ほぼ毎日チップを活用しているが、ハッキングや監視に対して不安はない。
セルシングさんは、
「現代のテクノロジーが、チップをハッキングできるところまで進んでいるとは思わない」と述べつつ
「でも将来、そのことについて考えることがあるかもしれない。
その時にはいつでも取り出すことができる」と語った。
とはいえ、スウェーデン南部の都市ルンド(Lund)にある放射線研究施設
「MAX IV研究所(MAX IV Laboratory)」の微生物学者である
ベン・リバートン(Ben Libberton)氏にとって、チップ移植の危険性は現実的だ。
チップ移植は「感染症や免疫系の反応」を引き起こす可能性がある。
だが、最も大きなリスクは、チップに格納されたデータ関係だと同氏は指摘。
「現時点では、移植チップが収集・共有しているデータは少ないが、今後増えていくだろう」と述べた。
同氏は、真の問題はどんなデータが収集され、誰が共有するかだと言う。
「いつかチップが医学的問題を検出できるようになった場合、誰が、いつそれを調査するのか」。
そして「移植チップで起き得ることとして、1か所に保存されるデータが多ければ多いほど、
私たちの意思に反して、そのデータを使用されるリスクがより高まる」と警鐘を鳴らした。
画像:スウェーデンのストックホルムで、チップ移植を行うユアン・ウステルンド氏
![【スウェーデン】ハイテク好きなスウェーデン、マイクロチップの皮膚下移植進む[05/29] ->画像>2枚](http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/8/7/700x460/img_87589e81bb397e5fbcc1f1439487b9c5158585.jpg)
AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3175882
続く)