北方領土を不法占拠するロシアが、色丹島周辺海域で新たな「軍事演習」を通告し、日本政府が抗議していたことが30日、分かった。
ウラジーミル・プーチン大統領は北方領土を電撃訪問する可能性が指摘されているが、演習の継続で不法占拠の既成事実化を
図っている恐れがある。ロシアは専制主義国家の中国、北朝鮮との連携を強めている。
石破茂政権下で日米関係の揺らぎも指摘されるなか、日本の国防は不安にさらされそうだ。
外務省などによると、ロシア側は今月15日から色丹島の北方で射撃訓練を行うと日本など各国に通告した。
来月10日までに連日、断続的な射撃を実施するとしている。
日本政府は通告があった1月10日付で、外交ルートを通して「北方四島におけるロシア軍の軍備強化につながるもので、わが国の立場とは
相いれず、受け入れられない」と抗議した。
ロシアは昨年、米大統領選の時期に合わせ、北方領土での軍事演習を通告した。9月にも閣僚を含む日本の慰霊団が歯舞群島周辺で
洋上慰霊を行うタイミングにかぶせて演習を通告してきた。
日本政府は、領土返還への平和条約交渉の地ならしとして、島への墓参やビザなし交流の再開を求めていたが、ロシアは「示威」で
応えた形だ。関係者は「とても交渉が進展する雰囲気ではない」と失望感をにじませている。
近年、ロシア軍は日本周辺に航空機や艦艇を頻繁に出動させ、領空侵犯や領海侵入を辞さない軍事活動を活発化している。
北方領土では不定期の大規模演習「ボストーク」を行い、1万人規模の兵員、多数の航空機・艦艇を動員して「他国からの防衛」を
想定した訓練も行っている。
また、ロシアは「共同パトロール」と称して、日本周辺で中国と多数の軍艦による艦隊行動や、軍用機による編隊飛行を実施している。
ウクライナ侵略を全面支援する北朝鮮とも連携を深め、核・ミサイル開発につながる先端技術を提供しているともされる。
昨年末には英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)がロシア軍の機密文書を確認し、日本などを〝仮想敵〟とし、防衛施設や
原子力発電所などの攻撃対象リストを作成していたと報じた。
文書は2014年ごろまでに作成された有事想定の訓練用とみられるが、同紙は「現在のロシアの戦略にも関連している」と指摘した。
政府関係者は「米国のジョー・バイデン前政権など自由主義諸国と連携したウクライナを支援したことで、ロシアの対日感情は
悪化している。日本周辺の軍事活動は、実戦を想定した予行演習の可能性もあり、警戒が必要だ」と分析した。
2025.1/30 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20250130-QXVULVXOQZNP3P6CCQULY3GFYU/