「ハコモノづくり」の公約は票になる。と言われるが、東京都内を見れば、真っ最中の衆院選でも、身近な区会議員選挙でも
「ハコモノづくり」の演説は、防災施設を除いてはまず聞かれなくなった。
日本の政治の進化の道標だろう(地方では相変わらずらしいが)。
しかし、隣国の韓国では、与野党とも「ハコモノづくり」の対政府要求を日常的に続けている。中でも「飛行場建設」となると、
地域は〝火の玉〟になる。
そうしたなかで、保守系紙の朝鮮日報(韓国語サイト10月14日)が〝憂国の情〟を振り絞るように、「新空港建設の愚」を説いた。
コロナ禍以降、税収欠陥・赤字財政は深刻化する一方だが、支持率20%台の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に、
空港建設プロジェクトの中止あるいは凍結を言い出せるような力はない。韓国の国力は、低質なハコモノ過剰により、ズルズルと落ちて
いくだろう。
韓国の面積は10万平方キロ余。北海道より、わずかに広い。北西の仁川(インチョン)から南東の釜山(プサン)まで400キロほどだ。
その狭い国土に、すでに15の空港(軍用、軍との共用を除く)がある。ちなみに北海道の空港は14(うち2空港は自衛隊との共用)だ。
韓国の15空港のうち11が、小幅ながら毎年、営業赤字を計上している。利用客が少ないからだ。
それなのに10の新空港建設プロジェクトが進められている。
韓国の場合は、地方財政が未熟なこともあるのだろうが、空港建設は全額国費だ。であれば、「うちの地域にも空港を造れ」の声は
大きくなる一方だ。
ボーイスカウトの世界ジャンボリーで世界中に悪評を振りまいた全羅北道(チョルラプット)のセマングム干拓地。
そこに新空港を造るというプロジェクトも、事業適正性検討を終えて着工が近づいた。
しかし、朝鮮日報によれば、セマングムの建設予定地から車で1時間の所に、すでに2つの空港がある。
その1つである務安(ムアン)空港は、建設前には年間992万人の利用客を予測していた。が、23年の実績は、わずか24万6000人。
「Kどんぶり予測」と言うべきか。誰も責任を取らない。
それどころか、「地域格差があるから利用客が少ない。だから、新空港をもっと造り、地域格差を解消すべきだ」との論が出てくる。
「飛行場大国」になったが、国家経済は破綻する―隣国は、そういう道を進んでいるのかもしれない。 (室谷克実)
2024.10/18 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20241018-7RZ3P6EFP5K6LLG22DBD3YISHU/