マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏や、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏など、米国の大富豪らが「核融合発電」に巨額の投資をしているという。
太陽のエネルギーを再現して、温暖化問題とエネルギー問題を一気に解決する「夢のエネルギー」である。
現在、国際協力で人類初の「核融合実験炉(ITER=イーター)」の建設がフランスで進んでいるが、専門家によると、実は日本の技術開発が先行しており、
2兆円をつぎ込めば大きく前進する可能性があるという。共産党一党独裁で、ほぼ横並びという中国。果たして、岸田文雄首相は知っているのか。
ー中略ー
エネルギー政策に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志研究主幹は「実は、技術開発で先行しているのは日本と中国。
特に日本は、磁場コイルなどの材料技術やプラントの設計技術を始め、各分野で幅広く開発に必要な技術力の蓄積があり、単独でも開発ができる稀有(けう)な国だ」と力を込める。
これに対し、中国はイーター参加で技術力を吸収しながら、自国内でも事実上の原型炉(実証炉)建設準備のためにすでに約1000億円を投入し、開発に全力を挙げている。
中国が「夢のエネルギー」を獲得すれば、現在の覇権拡大を加速しかねないのではないか。
核融合が専門で、文部科学省核融合科学技術委員会の原型炉開発総合戦略タスクフォースで21年まで主査を務め、
同省が18年に決定した「ロードマップ」もまとめた元慶応大学教授、岡野邦彦氏は「核融合は日本には、すでに手の届く技術になっている。
必要なのは『原型炉の建設』に着手すること。今はまだ中国に負けているとは思わないが、このままでは追い越されるのも時間の問題だ」
「計画を前倒しして、直ちに建設計画に着手すれば、40年代には発電の実証ができる。50年代には商用化の1号炉も造れる」と説明する。
腰が重い政府…「2年保留は大きい」
ところが、日本政府の腰は重い。今年2月の文科省核融合科学技術委員会では、ロードマップの3年前倒しが提案されたが、
25年頃まではイーターの実験炉建設の進捗(しんちょく)を「総合的に勘案した上で判断する必要があることから、決定を保留する」という姿勢が示された。
岡野氏は「ここに来て『2年の保留』は大きい。イーター建設は、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略などの影響で遅れる可能性がある。
イーターに合わせて『ロードマップの3年の前倒し』を保留するのは、逆に3年以上遅れるイメージだ」と嘆く。
ある関係者は匿名を条件に、「停滞の内情」を次のように明かした。
「核融合炉が〝夢物語〟だったときには皆が協力的だったが、開発のめどが見えてきた途端、既存の原子力発電や再生可能エネルギーの関係者らから横やりが入り始めた。
本音では、核融合が本当にできたら困る人たちがいる。『夢のエネルギー』より、自分たちの予算確保のようだ」
日本が核融合の原型炉建設に必要なコストは、累計で2兆円前後とされる。
前出の杉山氏は「2兆円は一見巨額だが、岸田政権は現在、脱炭素社会への転換に向けた肝いりの『GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議』で、
今後10年間で官民合わせて150兆円を投資するとしている。
これに比べれば格段に小さい。日本や欧米が足踏みしているうちに、中国に逆転されかねない。一刻の猶予もない」と危機感を募らせる。
岡野氏は最後に日本が開発を加速すべき意義を語った。
「核融合は、燃料であるリチウムも重水素も海から持って来られる。日本が技術と知恵によって『エネルギー資源国』になれる。
人類にとっても非常に重要な技術で、日本こそが開発すべきだ」
全文はソースから
夕刊フジ 2023.5/1 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230501-V27VKFBLOBIJLG7J7A5ERUVGG4/