「東京大惨事」韓国のニュースでは、そんな見出しが躍った。WBCでは3大会連続で一次ラウンド敗退が決まったためだ。数々の名勝負を繰り広げてきた日本戦でも大惨敗。韓国野球はなぜ“崩壊”したのか。
今大会前まで、WBCにおける日本と韓国の戦績は4勝4敗と互角だった。熱闘の末、イチローが劇的な決勝打を放った2009年大会の決勝など記憶に残る試合も多い。その中で行われたのが3月10日の日韓戦。
韓国国内はショック 世間の声は「投手陣が全くダメ」
「韓国では大手3局が中継し、視聴率は合計で11%ほど。さらに中盤の大量失点で視聴率がガクッと下がった」(現地記者)
4対13と“因縁の相手”にあわやコールド負けという大差での敗北となった。
在韓ジャーナリストの菅野朋子氏が語る。
「ここまでの差がつくとは予想しておらず、韓国国内はショックを受けている状況です」
韓国は7回までに10人もの投手を投入したが、日本打線にメッタ打ちに。
「韓国でも『投手陣が全くダメ』と受け止められています。10年代以降、特に投手力で日本との差がついています。韓国は外国人選手への依存度が高く、日本でプレーした外国人投手に頼り過ぎている。たとえば元ヤクルトのブキャナン投手は、日本では3年間で20勝でしたが、韓国では3年で42勝と倍以上の成績です。これに味をしめて、同じヤクルトを退団したスアレス投手を昨年獲得するなど、安易な補強を続けていて、選手を育てようとする姿勢に欠けている」(前出・記者)
“絶対エース”がまさかの不在
そんな中でも、“絶対エース”と呼ばれる若手選手がいた。それが、アン・ウジン投手だ。アンは昨季、韓国リーグで15勝を挙げ、最優秀防御率と最多奪三振の2冠を達成した韓国球界を代表する右腕。大きな戦力になるはずだが……。
「アンは17年に高校のチームメイトへのイジメ問題が報じられた。問題自体は被害者と和解が成立したといわれていますが、大韓民国野球ソフトボール連盟が関わる国際試合(オリンピックなど)への永久出場停止などの懲戒処分を受けています。WBCへの出場は可能だったのですが、世論の反発が根強く、代表に選出されなかったのです」(菅野氏)
元スポーツ紙の野球担当チーム長で、韓国野球学会理事の崔敏圭氏も続ける。
「韓国では最近、学校やスポーツにおける暴力が、非常に深刻な問題になっています。今年2月には、息子の校内暴力が報じられた警察幹部が職を辞している。アン選手の代表不選出も当然視されています」
批判を受けて「ベスト4に入ったら兵役免除」が廃止に
さらに、韓国ですべての男性に義務として課されている「兵役」が、選手のモチベーションに影響している。
「06年大会の直前に球界からの要請があり『ベスト4に入ったら兵役免除』という特例を設けた。そして、実際にベスト4入りし、選手たちの兵役免除を行った。しかし、『野球だけを特別視している』との批判を受け、翌年には特例が廃止された。09年大会で韓国が準優勝した際に改めて、兵役免除を求める声が出ましたが、実現しませんでした」(前出・記者)
13年、17年、今大会といずれの大会も一次ラウンド突破すら叶わなかった。
“アメ”が無くなり、“ムチ”ばかりの野球大国が、輝きを取り戻せる日は遠い。
https://bunshun.jp/articles/-/61618