西村康稔経産相が5日から10日の日程で米国を訪問する。現地では、ジーナ・レモンド商務長官や、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表ら複数の閣僚と会談を行う方針で、ジョー・バイデン政権が昨年10月に発表した「半導体関連の対中輸出規制」について、日米連携を確認する見込みだ。今月中旬には、岸田文雄首相と、バイデン大統領による日米首脳会談も調整されている。米国は、半導体という「現代の戦略物資」の輸出を規制することで中国の軍事力増強阻止を目指している。日本も含めた自由主義陣営による「半導体対中包囲網」が構築されれば、習近平国家主席の中国には大打撃になりそうだ。
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「(今回の訪米で)有志国連携を強固なものにしたいと考えている」
西村氏は昨年12月23日の記者会見で、こう抱負を語った。今回の訪米で、議題の中心となるのは半導体関連の対中輸出規制への対応だ。
バイデン政権は昨年10月、米国の最先端技術が中国に軍事利用されることを防ぐため、半導体や製造装置の新たな輸出規制強化策を発表した。
最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止にするほか、人工知能(AI)やスーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限する。さらに、米国の技術を使って海外で製造された半導体も規制の対象となるという、極めて厳しい措置だ。
米商務省は、措置強化の理由に「中国の脅威」を挙げている。中国はIT技術などを急速に発展させ、情報網を世界に急拡大させている。その最先端技術が中国の軍事力増強に直結する懸念があるほか、新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧に関しても、ITが監視や追跡に悪用されているとも主張している。
世界の半導体市場で日本のシェアは低下しているが、半導体製造装置の開発などでは日本とオランダが世界トップレベルの技術を有している。
対中規制の「抜け穴」を防ぐため、バイデン政権は日本にも協力を要請している。昨年12月9日、西村氏とレモンド氏の間で行われた電話会談では、米国が日本政府に足並みをそろえるように要請があったとされる。
ロイター通信は3日、岸田首相が米ワシントンを首相就任後初めて訪問し、早ければ13日にもバイデン大統領と会談すると報じた。
今回の西村氏の訪米では、首脳会談に先立って半導体規制について日米間の連携を確認し、すり合わせを行うとみられる。
米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「今月から下院で主導権を握る共和党の有力議員が『半導体規制の執行状況を議会でチェックする』と述べており、商務省も本気になって日本に協力を求めている。岸田首相の訪米を前に細部を詰めるのだろう。具体的には、中国を外して自由主義圏でサプライチェーンを確保するなど、中国ビジネスを失う企業が損をしない方策について話し合いが行われるのではないか」と解説する。
最先端半導体は、大量破壊兵器や最新の軍事システムに転用可能で、中国軍の能力を引き上げ、日本や米国など自由主義諸国の脅威になっている。中国に最先端半導体が渡らないようにするには、日本だけではなく各国の協力が欠かせない。バイデン政権はどんな絵図を描いているのか。
島田氏は「半導体製造装置企業については、米国と日本、オランダの企業で相当なシェアがあるが、半導体自体は韓国や台湾も販売しており、米国は『最先端半導体を中国に販売するな』と協力を求めている。最先端の半導体を製造することができる企業、その製造装置を製造できる企業は自由主義圏にある。中国はロシアとの連携を強めているが、中国もロシアも最先端半導体を製造することができない。自由主義陣営による包囲網ができれば、中国の兵器生産は相当厳しくなるのではないか」と語った。
2023.1/4 15:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230104-ELBDFO46UFLXFDHRIXXWQTH3VU/