【北京=川手伊織】中国で1組の夫婦に3人目の出産を認める改正人口・計画出産法が20日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会で可決し、同日施行した。少子化対策として国は適齢期での結婚や出産を奨励する。子育て世帯を対象にした所得減税などコスト軽減策の具体化も今後の焦点となる。
中国の法案は全人代常務委で3回審議して可決する例が多い。3人目の出産容認は5月末に中国共産党が方針を打ち出していたこともあり、改正法案の審議は一度だけというスピード可決となった。
2016年に二人っ子政策を始めたが、出生数は17年から減少が続く。21年は1949年の建国後最少になる可能性がある。習近平(シー・ジンピン)指導部は経済成長を阻害しかねないと少子化に危機感を強めている。
改正法は保育サービスの拡充や産児制限に違反した夫婦などに科してきた「社会扶養費」の廃止を盛り込んだ。親が安心して保育所に預けられるよう、政府の規定に反した保育所への罰則を明記した。違法営業などに罰金を科す。
家計支援策の取りまとめを急ぎ、個人所得税法を改正する。3歳未満の子を育てるのにかかった費用を所得税から控除できる仕組みを設ける方向だ。未成年の子を養う家庭がマンションを購入、賃貸する際、地方政府が補助することも検討する。
法改正によって国は出産や育児だけでなく、適齢期での結婚も呼びかける。中国の婚姻件数は13年のピークから39%減った。新郎が婚前に購入する新居など経済的負担が増しているためだ。
中国では未婚の親が産んだ子は公的支援を受けにくいという制度上の格差が残っている。結婚数が増えなければ、出生数の減少を止めるのも難しい。高額な結納など結婚の障害になっている古い慣習の見直しに取り組むとしている。
習指導部は総合的な少子化対策を早急にまとめたが、庶民の反応は今のところ冷めている。
国営新華社は5月末に「3人目の出産の準備はできているか」というアンケートを実施した。ネット上に転送された途中経過をみると、全体の9割を占める2万9000人が「全く考えていない」と答えた。アンケートはその後削除された。
中国国家統計局によると、第1子の出生数は直近18年が631万人と、6年で半減した。1人目や2人目がいなければ、当局が容認しても3人目は産めない。税財政を活用した支援策で出産意欲が高まるかはなお見通せない。
日本経済新聞 2021年8月20日 18:36
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2025S0Q1A820C2000000/
中国の法案は全人代常務委で3回審議して可決する例が多い。3人目の出産容認は5月末に中国共産党が方針を打ち出していたこともあり、改正法案の審議は一度だけというスピード可決となった。
2016年に二人っ子政策を始めたが、出生数は17年から減少が続く。21年は1949年の建国後最少になる可能性がある。習近平(シー・ジンピン)指導部は経済成長を阻害しかねないと少子化に危機感を強めている。
改正法は保育サービスの拡充や産児制限に違反した夫婦などに科してきた「社会扶養費」の廃止を盛り込んだ。親が安心して保育所に預けられるよう、政府の規定に反した保育所への罰則を明記した。違法営業などに罰金を科す。
家計支援策の取りまとめを急ぎ、個人所得税法を改正する。3歳未満の子を育てるのにかかった費用を所得税から控除できる仕組みを設ける方向だ。未成年の子を養う家庭がマンションを購入、賃貸する際、地方政府が補助することも検討する。
法改正によって国は出産や育児だけでなく、適齢期での結婚も呼びかける。中国の婚姻件数は13年のピークから39%減った。新郎が婚前に購入する新居など経済的負担が増しているためだ。
中国では未婚の親が産んだ子は公的支援を受けにくいという制度上の格差が残っている。結婚数が増えなければ、出生数の減少を止めるのも難しい。高額な結納など結婚の障害になっている古い慣習の見直しに取り組むとしている。
習指導部は総合的な少子化対策を早急にまとめたが、庶民の反応は今のところ冷めている。
国営新華社は5月末に「3人目の出産の準備はできているか」というアンケートを実施した。ネット上に転送された途中経過をみると、全体の9割を占める2万9000人が「全く考えていない」と答えた。アンケートはその後削除された。
中国国家統計局によると、第1子の出生数は直近18年が631万人と、6年で半減した。1人目や2人目がいなければ、当局が容認しても3人目は産めない。税財政を活用した支援策で出産意欲が高まるかはなお見通せない。
日本経済新聞 2021年8月20日 18:36
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2025S0Q1A820C2000000/