金 愛(キム・サラン)
1987年生まれ、韓国・漢陽大學校卒、漢陽大學校大学院で言論学と国際政治学の修士号を取得。 2013年からマスコミに在職し、各種イシューに対する取材および記事を作成。現在はフリーランスで主に日韓問題、政治、人権を専門に行う。
韓国で30年余り続いてきた“元慰安婦運動”。一部に偽りや誤りがあったという疑惑も出ているが、元慰安婦の生存者は日本政府を相手取った損害賠償訴訟に力を注いでいる。
そんな元慰安婦が提起した2件目の損害賠償訴訟の判決が4月21日に下される。今年1月にソウル中央地裁が日本政府敗訴の判決を下した裁判ではなく、李容洙(イ・ヨンス)氏ら元慰安婦(2020年12月基準の生存者16人)が提訴した裁判だ。
「正義記憶連帯(正義連)は慰安婦を利用した詐欺団体だ」と暴露して波紋を呼んだ元慰安婦の李容洙氏は「慰安婦被害者の恨みを直接解決する」と述べ、ICJ(国際司法裁判所)への慰安婦問題の提起を文在寅大統領に要請、慰安婦問題を突き詰めていく考えだ。
訴訟の結果次第で、日韓間の新たな外交的波紋が予想される。
アジア女性基金や2015年の慰安婦問題合意などの結果、日本政府が元慰安婦に補償した金銭を一部の元慰安婦と遺族たちが受領したが、賠償の要求が終わる気配はない。「永久的かつ不可逆的に解決された」という日本の立場が反映されることもない。
韓国法曹界は3月25日、ソウル中央地裁民事15部(ミン・ソンチョル部長判事)は、故グヮク・イェナム氏やキム・ボクドン氏など元慰安婦や遺族など20人が日本政府を相手に起こした損害賠償訴訟の弁論を24日に終え、4月21日に判決を下すと明らかにした。
本件は今年1月に判決が出る予定だったが、裁判所は追加審理が必要として弁論を再開した。
これに先立つ1月8日、ソウル中央地裁民事34部は、同じ趣旨で提起された損害賠償請求訴訟で「日本の不法行為に国家免除(state immunity)は適用できない」として、日本政府に対し、故ベ・チュンヒ氏ら元慰安婦12人に1人1億ウォンずつ支給を命じる判決を下している。
これが冒頭に述べた日本政府敗訴の裁判である。
日本政府は「韓国の裁判権は認められず、控訴する考えもない」という立場を表明し、無対応の原則を貫いている。日本政府は訴訟提起から3年間、訴状送達を拒否して、初公判以降、一度も出席していない。
日本政府は1965年に締結した日韓請求権協定と、2015年に交わした慰安婦合意で「慰安婦賠償問題は永久的かつ不可逆的に解決された」という立場を変えていない。 判決そのものを認めず、控訴しなかった。
■払っても払っても終わらない訴訟
2件目の裁判でも日本政府は無対応の原則を固守し、被告側代理人がいない欠席裁判が進行した。最大の争点は、やはり「日本政府に国家免除を適用できるかどうか」だ。 国家免除は「国内の裁判所は外国の国家に対する訴訟に関して裁判できない」という国際法上の原則である。
主権国家間では裁判権を行使できず、外交などの方式で解決するという趣旨であり、同原則が適用される案件では、裁判所は審理を行わずに棄却できる。
慰安婦側の弁護人団は、日本の国家免除はありえないという立場だ。
弁護団は「国際慣習法上、裁判を受ける権利と国家免除が衝突する場合、双方を比較して個別に判断しなければならない」と主張し、「国際人権条約などの精神を考慮すると、今回の事件は国家免除の例外を認めなければならない」として、日本の賠償責任を追及した。
2015年の日韓慰安婦合意で、日本政府が支給した10億円を元従軍慰安婦の一部が受領したことについては、「2015年の合意は、政治的合意に過ぎない。法的拘束力はなく、被害者の賠償請求権は消滅しない」と主張している。
韓国政府は2015年12月28日に日本政府と交わした「慰安婦合意」に基づき、日本政府が支出した10億円(約108億ウォン)を被害者の名誉と尊厳の回復、心の傷の治癒に向けた事業に使うため「和解・癒し財団」を設立、生存していた元慰安婦47人のうち34人と死亡者199人のうち58人の遺族に合わせて44億ウォンを支給した。
2021.4.9(金)
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