<米大統領選でアメリカの政情が不安定化することを、最も恐れているのは人口2300万人の民主主義・台湾かもしれない>
台湾の呉サ燮(ジョセフ・ウー)外交部長(外相に相当)は11月2日、アメリカ大統領選挙後の混乱に乗じて、中国が軍を用いて台湾に対する作戦を活発化させる恐れがあると警戒感を示した。
さらに翌3日には、台湾は「必要なすべての準備」を整えたと国防部長(国防相に相当)が発言した。政権の主要幹部が出席する国家安全会議を蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が招集し、軍に「厳戒態勢」を取るよう指示したのを受けてのことだ。
大接戦で11月3日の投票日を迎えたアメリカ大統領選挙の行方を、人口2300万人の民主主義国・台湾は注視している。台湾政府はこれまで、対中強硬姿勢をとるドナルド・トランプ米大統領のおかげで、中国との対立に自信を深めてきた。
だが現在、台湾政府は中台関係における力学の変化に備えている。トランプの対立候補で民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が勝利する見込みが強まっているからだ。
外交部長の呉は2日、立法院の国防委員会で議員を前に発言し、中国政府がこの機会に乗じ、台湾に対する武力による威嚇行為をエスカレートさせる可能性があると述べた。中国政府は台湾を、自らの領土の一部だと主張している。
「我々は多くの可能性を検討している。その1つは、大統領選挙後も勝者がすんなり決まらない不安定な時期が長期化すれば、その間隙を突いて中国が武力で台湾を脅す可能性だ」と、呉は述べた。
「今のところ、中国軍にさらなる動きはない。中国が軍を動かす場合は、事前に何らかの予兆があるはずだ」と、呉は付け加えた。
多極化志向をとる蔡政権の外交努力を率いる呉は、立法院の議員に対し、アメリカがこの地域に積極的に関わる姿勢は、米国内の政治情勢にかかわらず変化しないだろうとの見方を示した。
「アメリカ国内での不確実性に関係なく、アメリカこの地域での軍事プレゼンスを維持すると私は確信する。中国がその軍事力を用いる事態を牽制するために、プレゼンスを増強する可能性さえあるはずだ」と呉は述べた。
さらに呉はこう続けた。「我々は今後もアメリカと緊密に連絡を取り、情報を共有すると共に、(あらゆる脅威に)最も適切な方法で対応するための十分な時間を確保していく」
蔡政権は、台湾・米国貿易および投資枠組協定(TIFA)の締結に向けたアメリカ政府との交渉を「積極的に推進している」と呉は国防委員会に述べたが、交渉がいつ再開するかについては正確な時期を示せなかった。
2日には、中国人民解放軍が8機の軍用機(うち6機はジェット戦闘機)を台湾の防空識別圏(ADIZ)に飛来させたと、台湾国防部が明らかにした。
台湾海峡における中国軍の偵察機や戦闘機の活動は、9月半ば以降活発化している。台湾国防部は現在、人民解放軍の軍用機による台湾ADIZへの侵入事案について、毎日情報を更新している状況だ。ただしADIZの定義は、国際法のもとで明確に規定されたものではない。
3日の記者会見で、厳徳発(イェン・デファ)国防部長(国防相に相当)は、台湾軍は蔡から「厳戒態勢」を取るよう命じられており、アメリカ大統領選挙の結果を受けて中台間の力学に変化が生じた場合に備え、台湾軍は「あらゆる不測の事態への対応策」の準備ができていると述べた。
10月31日に開催された、政権主要幹部が出席する国家安全会議において、蔡は、アメリカ大統領選挙がこの地域に及ぼす潜在的影響、そして、より広範な米中関係への影響についての報告を聞いたと厳は述べた。
(翻訳:ガリレオ)
Newsweek ジョン・フェン 2020年11月4日(水)16時10分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-94895.php
今年4月、台湾沿岸に表れた中国の空母「遼寧」と艦載機のJ-15戦闘機(写真は2017年の南シナ海)
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