内閣府が設けた国内科学者の組織「日本学術会議」は、かねてから日本の軍事研究を抑制してきた。しかし、自民党議員らは、同会は中国共産党の科学技術機関と連携しているとして、その矛盾を指摘している。
日本学術会議は1950年と67年に、「軍事目的の研究を一切禁じる」とする声明を出し、科学者が軍事技術に協力するのを抑制してきた。さらに、2017年に防衛省が軍事応用できる基礎研究に費用を助成すると発表したことに反発し、「国家安全保障の研究と学問の自由が緊張関係にある」として、前の2つの声明を引き継ぐ意向であるとした。
自民党・長尾敬議員は自身のブログで10月3日、日本学術会議の声明を引用して批判している。議員は、同会は「学問に応じて学問の自由にガイドラインを設けている、とも受け取れる」と政治的な偏向性を疑っている。
こうした日本の安全保障技術に対して非協力の姿勢を示す日本学術会議だが、2015年9月7日、中国科学技術協会と、両機関における協力の促進を図ることを目的とした覚書を締結した。 中国科学技術協会は、中国全土すべての学会と科学館を管理し、国内の科学技術知識の広報に大きな役割を果たす組織だ。
中国は2050年までに科学技術における世界のリーダーになることを目指している。党が民間の技術を軍事に利用することを定める「軍民融合」政策を実践しており、軍事改革のひとつと考えられている。このため、共産党体制の中国では政治目標と学術研究および軍事開発の境目が曖昧だ。
このため、中国の学術機関との連携にはリスクがあると議員らは指摘する。自民党・佐藤正久議員は、ツイッターで、「日本の軍民複合と言われる分野の基礎研究にさえ反対なのに、中国軍と縁のある研究は反対せず許容している。このことは、自民党内では保守系にかかわらず批判が多い。仮に同会議が中国と縁を切っても困るのは中国の方で日本ではない」と書いた。
近年の中国の軍事拡張とインド太平洋地域の拡張主義には、防衛省は「力を伴う現状変更」として危機感を示している。2017年の防衛白書には、中国の戦力の近代化について「具体的な将来像や必要性を明確に示さないまま軍事力の急速な近代化を進めている。わが国周辺を含む地域および国際社会の安全保障上の強い懸念」と表現している。このため、防衛省は費用助成などを通じて、日本の軍事研究を後押ししたい考えだ。
いっぽう、日本の学術機関のすべてが、安全保障技術の協力を全て否定している訳ではない。日本学術会議は2018年、国立・私立大学、研究機関の183からアンケートをとったところ、防衛装備庁が2015年度から開始した「安全保障技術研究推進制度」に申し込みしたのは、全体で30%に及ぶことが明らかになった。
続く。
(編集・佐渡道世)
大紀元 2020年10月05日 14時37分
https://www.epochtimes.jp/p/2020/10/62982.html