9月17日、韓国の代表的な株価インデックスである“韓国総合株価指数(KOSPI)”が前日から1.22%下落した。
同日のアジア株式市場は全般的に軟調だったが、日中や経済に占める半導体産業の比重が高い台湾と比較しても、韓国株の下げが目立った。
韓国経済の先行きに懸念を抱く世界の主要投資家は増えつつあるようだ。
その背景には複合的な要因がある。
特に、米国商務省が中国のファーウェイへの輸出規制を発動した影響は大きい。
それは、サムスン電子などが半導体を中国に向けて輸出し、経済成長を実現するという韓国の経済運営モデルを機能不全に陥らせる恐れがある。
中国企業はスマートフォンやメモリ半導体などの分野で競争力を高め、韓国企業にとっての脅威に変わりつつあることも見逃せない。
(中略)
サムスン電子を直撃、米国のファーウェイ制裁
9月15日、米商務省が中国の通信機器大手ファーウェイに対する輸出規制を発動した。
その影響は大きい。
米国の技術やソフトウェアに依存するサムスン電子は、ファーウェイへの製品供給を止めた。
それに加え、同社は自社の半導体などが別の会社を経由して最終的にファーウェイに供給されていないかまで確認しなければならない。
その負担は小さくないだろう。
サムスン電子が米商務省にファーウェイへの半導体輸出を認めるよう申請したのは、額面通りに規制が適用されると業績にかなりの影響が出るからだ。
同社は、何とかして猶予措置を認めてほしい。
ただし、トランプ大統領をはじめ米国の対中強硬派は動画アプリ“TikTok”の米国事業に関して、中国のバイトダンスの影響力が残ることを問題視している。
申請が認められるとは考えづらい。
韓国勢が得意とするメモリ半導体市場の先行きも不透明だ。
メモリ半導体分野では中国企業が量産を開始し、低価格競争が進みつつある。
中国企業の台頭を阻止しようと、米国は対中圧力を強める可能性がある。
9月に入り、ファーウェイはメモリ半導体の在庫確保に注力し、駆け込み需要から価格が一時的に大きく押し上げられた。
その反動減の影響は過小評価できず、年末までにDRAM価格の下落に拍車がかかるとの予想が出ている。
5G通信機器に関しても欧州各国はファーウェイの製品を自国から締め出し、エリクソンなど域内企業の製品調達を重視している。
韓国経済を実質的に牛耳ってきたサムスン電子の事業環境は厳しさを増している。
世界的な株価の高値警戒感、米国の小売りや雇用環境への不安もあり、韓国株を手放す外国人投資家などは増えているようだ。
世論の不信感を買う文大統領
韓国国内でも経済の先行きに関する懸念は高まっている。
米中の対立が先鋭化していることに加えて、国内では新型コロナウイルスの感染者数が増加している。
国内の飲食・宿泊業などは真綿で首を絞められるような厳しい事業環境を迎えた。
企業収益の減少によって、借り入れに頼って消費などを行ってきた家計の資金繰り懸念も強い。
家計を取り巻く経済環境の厳しさは、韓国の百貨店とディスカウントストアの売り上げが前年同月の実績を下回っていることから確認できる。
ファーウェイへの出荷が止まっているため、最大の輸出先である中国を中心に韓国の輸出は想定以上に減少する恐れがある。
その展開が現実のものとなれば、家計の支出余力はかなり落ち込むだろう。
そうした懸念がある中、文大統領はどのようにして経済の下振れを回避するか、妙案を見いだせていない。
(省略)
今後、景況感が悪化すれば、労組が賃上げを求めて労働争議が激化し、企業や投資資金の海外流出が増える展開も排除できない。
米中対立の先鋭化と感染の拡大によって、韓国経済の不確実性は一段と増大している。
真壁 昭夫(法政大学大学院教授)
現代ビジネス 9/21(月) 7:01
https://news.yahoo.co.jp/articles/c3923dc427186f89928c2f8f6b2e2b03b8c1a08c