足元で、コロナウイルスの感染再拡大によるリスク上昇で、韓国の製造業部門の雇用の悪化が深刻だ。
韓国の雇用労働部の発表では、6月、製造業の雇用は7.7万人減少した。2月以降、韓国の製造業の雇用は失われ続けている。
製造業部門は、輸出依存度の高い韓国にとって重要な分野であり、その分野での雇用状況の悪化は、韓国の社会と経済に大きな影響を与える可能性が高い。
製造業部門で雇用が失われている背景の一つに、外需の低迷がある。
世界的なコロナウイルスの感染の再拡大によって世界経済の回復の足取りが怪しくなっており、それが韓国の雇用を直撃している。
これまで、世界の経済は4月第2週あたりに底を打ち、緩やかに持ち直しの傾向を示してきた。
ところが、コロナウイルスの感染が再び増加傾向を辿っていることもあり、世界的な回復傾向のペースは鈍化している。
今まで世界経済を支えてきた米・中では個人消費が伸びていないこともあり、V字型の景気回復を期待することが難しくなっている。
米国の4〜6月期の国内総生産(GDP)成長率は、マイナス32.9%に陥りV字回復は期待できなくなった。
さらに、7月半ばごろから、米国をはじめ世界経済の持ち直しペースは明らかに鈍化している。
米国の経済政策への不安や感染の拡大などの影響は軽視できない。
外需依存度の高い韓国の雇用喪失は、世界経済の先行きがかなり険しいものになることを示唆している。
韓国経済の現状を端的に表現すると、どうしても海外経済の動きに影響を受けやすい。
輸出依存度が高いため(韓国の輸出はGDPの約40%)、米国や中国をはじめ世界経済の需要が落ち込むと、韓国の経済は急速に縮小してしまう。
特に、今回のコロナショックの影響は大きい。各国で人の移動が制限され、ヒト・モノ・カネの流れが停滞している。
韓国経済にとって、米国の個人消費の落ち込みの影響はかなり大きい。
近年の世界経済を振り返ると、米国の個人消費が緩やかに増加したことがグローバルな景況感の改善と成長を支えた。
韓国は、スマートフォンや半導体の需要を取り込んで輸出を増やし、経済成長を実現できた。しかし、コロナショックの発生によって、米国の需要は大きく低迷してしまった。
それは韓国製造業の雇用喪失の一因だ。データを見ると状況の深刻さがわかる。
トランプ政権が実施した失業給付の特例措置(週600ドル)などに支えられて、4月半ばごろに米国経済は底を打ち、5月、6月と小売売上高は反発した。
それでも、個人消費がコロナショック以前の状況に戻るにはほど遠い。4〜6月の米国GDP成長率を項目別にみると、個人消費は前期比年率ベースで25%減少だ。
また、韓国にとって最大の輸出先である中国経済はまだら模様だ。生産活動は回復しているが、消費全体が伸びない。
生産面では公共事業向けに鉄鋼や建機分野が持ち直している。そうした資材を中国は国内で生産し、韓国に取り付く島はない。
補助金に支えられた自動車を除き、個人消費は低迷している。韓国の製造業は急速な需要の蒸発に直面し、雇用を減らして生き残りを目指さざるを得なくなっている。
今後、韓国の雇用環境はさらに悪化し、人々が将来に希望をもって生活することが難しくなる恐れがある。
世界経済の低迷が続き、韓国経済がかなり厳しい状況を迎える可能性がある。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74571?imp=0