【ワシントン時事】国際通貨基金(IMF)が新型コロナウイルス危機を受けて模索した、準備資産を活用する途上国支援案が頓挫した。最大出資国の米国が「効果がない」と一蹴したためだ。外交で対立する中国やイランが容易にドル資金を手にすることを嫌ったとの見方も浮上する。
新型コロナによる世界経済の混乱で、IMFに緊急支援を要請したのは100カ国超に上る。ゲオルギエワ専務理事は支援拡充へ「あらゆる手段を議論する」と意欲を示していた。
浮上したのは、加盟国がドルや円など国際主要通貨と交換できる「特別引き出し権(SDR)」の新規分配案だ。SDRはIMFへの出資比率に応じて各国に分配される準備資産で、外貨不足で対外債務の返済が困難になった場合にドルなどと換えられる。直近ではリーマン・ショック後の2009年に2500億ドル(約27兆円)相当が配られた。
資金繰りに窮した途上国への迅速な支援策として、フランスは5000億ドル規模の新規分配を提案。新興・途上国で組織する24カ国閣僚会議(G24)は「分配を検討すべきだ」と訴えた。
しかし、ムニューシン米財務長官は16日の会合で、最も支援が必要な最貧国に分配されるSDRは全体の3%に過ぎず、「効果がない」と反対した。ゲオルギエワ専務理事は会合後の会見で「分配案は現時点で議題ではない」と、協議が進展しなかったことを示唆した。
ロイター通信は関係者の話として、「トランプ政権はイランと中国が巨額のドルを入手できることを望んでいない」と報じた。対立国への外交圧力を強める思惑があったとみられる。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041700684&g=int
時事ドットコム 2020年04月17日20時33分
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事=3月4日、ワシントン(EPA時事)