世界一の拠出金を出すアメリカだが…
未曾有の世界的な感染症との戦いに全力を注いでいるはずのWHO(世界保健機関)が、予想外の注目を浴びている。
米TV「CNBC」によると「ドナルド・トランプ大統領が、WHOによる新型コロナウイルス感染爆発に対する『すべての対策』が間違っており、アメリカは拠出金の支払いを控えると脅した」という。
WHOは新型コロナについて、2020年1月30日に国際的な公衆衛生上の緊急事態であると宣言した。トランプはその翌日、中国に対する渡航制限措置を出している。同記事によれば、トランプは次のように主張した。
「彼らは(新型コロナが)たいしたことじゃない、大きな問題じゃないと言っていた。大丈夫だ、とね。それでも結局、私が国境を封鎖したら、私の決断は間違っているかのように言っていたが、やっぱり正しかったではないか」
そしてWHOのテドロス・アダノム事務局長が当時、「国際的な交易や渡航を不必要に妨害する対策」を取るべきではなく落ち着くべきだ、と述べていたと記事は指摘する。
つまりトランプは、WHOが対策にケチをつけてきたが、結果的に自分が正しかっただろうと糾弾しているのだ。さらに英公共放送「BBC」は、トランプがWHOについて「中国中心主義」「中国寄り」であると批判したと報じている。
そもそもWHOの運営資金は各国政府の分担金や寄付、さらに民間の寄付などで賄われている。「BBC」によれば、「昨年の会計年度では、米政府はもっとも多額の寄付をしており、2019年の資金の15%ほどになる。アメリカに次いで大口の貢献をしているのは、10%を賄うビル&メリンダ・ゲイツ財団だった」という。
WHOによれば、国だけの分担金を見ると、もっとも貢献しているアメリカに次ぎ、2位は中国、3位は日本、4位はドイツ、5位はイギリス、6位はフランス、7位はイタリア、8位はブラジルと続く。ただ2位の中国は、アメリカの拠出金5790万ドルのちょうど半分ほどである。
アメリカは分担金や寄付により、総額4億ドル以上(2019年)払っているが、中国は総額4400万ドルを支払っているだけだという。
さらに米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、テドロスはWHOのトップになるために選挙で中国の強力な後押しを受け、トップに選ばれてからまず訪問したのは中国だったと報じている。その訪問で「中国の医療保険制度から私たちは学ぶことがある」と絶賛していたという。
たしかにWHOは、中国に甘い発言などが指摘されてきた。そんなことから、トランプと同じようにWHOを批判している要人は他にもいる。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、麻生太郎・財務相兼副総理が「チャイニーズヘルスオーガニゼーション(中国保健機関)に直せっていうのが、わんわん出ていた」と発言していると紹介し、さらに、「台湾の高官らは、WHOが中国の要請で台湾のWHO加盟を認めてこなかったために、このウイルスについて台湾による初期の警告を無視したと述べている」と書く。
しかもWHOはそうした指摘を不都合に感じているようだ。英紙「ガーディアン」は、WHOのブルース・アイルワード事務局長補佐が、香港のジャーナリストとのテレビ電話インタビューで台湾のWHO加盟を認めるかと聞かれ、数秒間、フリーズしたと報じている。
そしてジャーナリストが「質問を繰り返しましょうか」と問うと、アイルワードは「いや、いいよ。次の質問に行こうか」と質問から逃げようとした。それでもジャーナリストがしつこく台湾について質問すると「アイルワードは電話を切ったのか、接続を解除してしまった」という。
番組側はテレビ電話をかけ直し、改めて同じ質問を投げた。するとアイルワードは、「中国のいろんな地域を見ると、同国はかなり上手く新型コロナ対策をしていた」と答えたのだった。明らかに、台湾を中国の一部であると強調する中国に忖度した回答だった。
世界的な感染症と戦う国連機関が、どこかの国に肩入れするようなことがあってはならない。ましてや、国際的な国家などの分断を国連の機関が生むようなことは許されないのである。
Toshihiro Yamada
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200412-00000002-courrier-int
4/12(日) 15:00配信 記事元 クーリエ