フィリピンの首都マニラ近郊で起きた火山の噴火で、大量に降り積もった火山灰によって農作物に大きな被害が出るなど、影響が広がっています。日本の専門家は「再び大きな噴火が起きる可能性は十分ある」と指摘していて、フィリピン当局が引き続き警戒しています。
今月12日、フィリピンの首都マニラの南、およそ60キロにあるルソン島のタール火山が噴火し、およそ4万3000人が避難生活を送っているほか、大量に降り積もった火山灰によってコメやバナナ、コーヒーなどの農作物に大きな被害が出ています。
フィリピン農業省は、これまでに2770ヘクタール余りの農地などが被害を受け、被害額は日本円にしておよそ12億円に上ることを明らかにしました。
このうち火山周辺のカビテ州では、パイナップル畑が一面、黒い灰に覆われ、収穫前のパイナップルに灰がこびりついている様子が確認されました。
パイナップル農家の男性は「もう収穫することはできません。もし収穫できたとしても、観光客が来なければ、ただ腐らせるだけです」と話していました。
今後について、タール火山の監視体制の強化を支援してきた名古屋大学大学院の熊谷博之教授は「再び大きな噴火が起きる可能性は十分ある。過去には、噴火が数日程度だったケースもあれば、1年ほど断続的に続いたケースもあり、どのくらいの期間になるか分からない」と話しています。
そのうえで、噴火によって火山が大規模に崩れ、湖に大量の土砂が流れ込むことで、湖の水が対岸の地域に押し寄せる危険性もあると指摘しています。
フィリピン当局は、噴火の警戒レベルを上から2番目のレベル4に維持し、引き続き警戒しています。
専門家「再び噴火の可能性十分ある」
フィリピンのタール火山の噴火について、2009年から現地での監視体制の強化を支援してきた名古屋大学大学院の熊谷博之教授は「再び大きな噴火が起きる可能性は十分ある」と指摘しています。
タール火山は「タール湖」と呼ばれる湖に浮かぶ火山島で、熊谷教授によりますと、島内での居住は禁止されていますが、実際には多くの人が住んでいるうえ、観光客が訪れることもあるということです。
また、タール火山は30年以内に噴火する確率が88%と指摘されるなど、噴火の頻度が高いのが特徴だということです。
1911年には、爆発的な噴火で1300人以上が死亡したほか、1965年の噴火では、およそ150人が死亡したうえ、火砕流が数キロ先の対岸の地域まで流れ出し、大きな被害が出たということです。
1977年の噴火から今回まで、大きな噴火は観測されていませんでしたが、日本の研究機関などが支援して監視体制を強化し、次の噴火に備えて警戒していたということです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20200115/k10012246871000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_001
NHKニュース 2020年1月15日 18時52分
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