南北経済協力を進めるに当たり、北朝鮮に対する制裁の順守について調整するワーキンググループを設置することで韓国と米国が合意した。米国務省が30日(米国時間)に明らかにした。これには「調整」という言葉が使われているが、実際は韓国政府の「前のめり」にブレーキをかけることが目的だ。また今年9月に平壌で行われた南北首脳会談に経営トップが同行したサムスン、現代自動車、SK、LG、ポスコなど韓国大手企業に駐韓米国大使館が先日接触し、米財務省の依頼という形で北朝鮮関連事業の現状を確認すると同時に、電話での会議を求めたという。米財務省は平壌での首脳会談後も韓国の複数の銀行に直接連絡し、北朝鮮関連事業について警告を行っていた。これらはどう考えても尋常な事態ではない。もし韓国政府が一連の状況を安易に考えているとすれば、今後国益を大きく損なう恐れもでてくるだろう。
米国はこれまで韓国政府に対し「南北関係の前のめり」を複数回にわたり警告してきた。平昌冬季オリンピックへの北朝鮮参加、離散家族の面会、南北の軍による通信ラインの復旧などでは人や燃料、物資などの移動で米国は例外を認めたが、鉄道連結事業など南北経済協力については米国ははっきりとノーを突き付けた。南北関係の改善が北朝鮮の非核化に先立ってはならないと米国は考えているからだ。それにもかかわらず韓国政府は文在寅(ムン・ジェイン)大統領が欧州を歴訪した際、各国の首脳に対して堂々と「制裁の緩和」を求めるなど、米国を孤立でもさせるかのような行動を取った。韓国政府によるこれら一連の行動に米国政府が警戒を強めたことも当然考えられるだろう。
米国政府が韓国政府の頭越しに企業や銀行の関係者と直接接触しているのは、要するに韓国政府を信用していないからだ。米国としても韓国の銀行や企業に制裁を加えた場合の混乱は避けたいと考えているはずであり、それには米国からのメッセージが正確にはっきりと伝わるようにしなければならないが、間に韓国政府が入ると絶対にそうはならないと米国は警戒しているのだ。
米国は北朝鮮が非核化交渉に応じた今年だけでも、個人や企業などへの独自制裁を9回発表した。6月の米朝首脳会談の後だけでも6回だ。米国のトランプ大統領は「金正恩(キム・ジョンウン)委員長と恋に落ちた」とまで語ったが、その一方で制裁は全く緩めようとしない。戦争ができないとなれば、北朝鮮を非核化に導く方法は制裁以外にないからだ。しかし北朝鮮は核廃棄に向けた実質的なロードマップに関する協議にさえ今なお全く応じようとせず、トランプ大統領を相手としたショーを繰り返している。このような状況で韓国政府が北朝鮮との関係改善ばかりに没頭し、企業や銀行もこれに従わせようとすれば、米国が韓国に対してどのような対応に乗り出すか予測がつかなくなる。北朝鮮産石炭が韓国に輸入され、その支払いに韓国の銀行が関係し、また平壌での首脳会談に大手企業のトップが同行したという事実を米国はどのように受け止めただろうか。もし米国が制裁に乗り出すようなことが本当に起これば、その対象となった銀行は間違いなく破産に追い込まれ、企業は貿易そのものができなくなるだろう。
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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2018/11/01 10:03