中学生の娘の友達を殺害して遺体を遺棄したとして逮捕されたイ・ヨンハク容疑者(35)は先月、ある総合編成チャンネル放送局に映像を送った。先月6日、自宅で飛び降り自殺した妻(31)の遺体を自らふき、唇を重ねる映像だったという。
同容疑者は映像を送ってきて「妻の葬儀費用や娘の手術代3500万ウォン(約350万円)が必要だ」と言ってきたそうだ。
イ・ヨンハク容疑者は誰よりも「報道の甘い汁」をよく知っていたようだ。地上波テレビ局の起業支援番組に2005年、自身の病気について投稿した。「私と娘は難病『巨大型セメント質腫』(歯と骨を接続する部分に腫瘍(しゅよう)ができる病気)を抱えている」という内容だった。
この番組ではイ・ヨンハク容疑者一家に8坪(約27平方メートル)のチキン店を開業させてくれた。同容疑者は「我が娘よ、愛しているよ。お前のために一生懸命生きるよ」と涙をこぼした。開店初日には229万8000ウォン(約28万円)を売り上げた。
ところが、このチキン店は1年で閉店した。閉店の理由は分からない。その後、イ・ヨンハク容疑者は「娘の20年分の治療費を募りたい」と自転車で全国を一周して、米国でも募金運動をした。そのたびに報道機関は家庭の事情を伝えて支援金を集めた。
そのようにしてイ・ヨンハク容疑者は今年2月まで番組だけで10回以上も出演している。本紙も2008年に同容疑者が作った映像コンテンツを美談として紹介した。
こうした家庭事情が報道されるたび、イ・ヨンハク容疑者の個人の支援口座には入金があった。同容疑者は2010年、ある報道機関のインタビューで、「メディアに一度出れば700万ウォン(約70万円)入ってくる。記事1つで2000万ウォン(約200万円)支援をもらったこともある」と言った。
その金で外車を買い、高価な犬を飼った。報道を見て支援金を送った人々の善意にはそぐわないことだ。
報道機関がある人物の秘密にしたいことまですべて突き止めるのは容易ではない。またイ・ヨンハク容疑者の殺人容疑と報道機関の募金には直接関係がない。しかし、同容疑者一家の異常な行動に、報道機関は気づくこともできたはずだ。
妻は数百万ウォン(数十万円)のブレスレットを付けて番組に出演し、支援を要請した。駐車場に外車を駐車させながら、撮影時はタクシーに乗った。報道機関が周辺取材をしていたら、同容疑者の実生活を知ることができたはずだった。
だから、「報道機関は視聴者や読者の目を引くために『感動』を絞り出し、イ・ヨンハク容疑者一家の本当の姿から目をそらしたのではないか」という思いは消せない。「美談を商業化した」という批判の声も聞こえてくる。
報道機関が美談を報道する時、「ファクトチェック」(事実確認)が比較的おろそかになっていたのは事実だ。誇張しすぎて、かえってその意義を損なうという批判もある。
状況は全く違うが、株式投資で400億ウォン(約40億円)もうけて20億ウォン(約2億ウォン)寄付したと伝えられたパク・チョルサンさんの話は、このほど一部がうそだったと明らかになった。
パク・サンチョルさんは「400億ウォンと自ら言及したことはないが、はじめ報道機関に間違って伝えられ、その後もこれを訂正しなかった」と言った。彼の「偽りの美談」に対して報道機関には責任がないのだろうか? パク・サンチョルさんの寄付そのものは賞賛に値する行為だった。
心配なのは、今回の件で何の関係もない人が被害者になる恐れがあるということだ。福祉団体などには「募金をやめたい」という電話がかかっているという。
イ・ヨンハク容疑者の事件は、最近やっと定着し始めつつある「寄付文化」のためにも、報道機関がいっそう入念にファクトチェックをしなければならないことを示している。
社会部=ソン・ホヨン記者
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/10/20/2017102001733.html
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/10/20/2017102001733_2.html
同容疑者は映像を送ってきて「妻の葬儀費用や娘の手術代3500万ウォン(約350万円)が必要だ」と言ってきたそうだ。
イ・ヨンハク容疑者は誰よりも「報道の甘い汁」をよく知っていたようだ。地上波テレビ局の起業支援番組に2005年、自身の病気について投稿した。「私と娘は難病『巨大型セメント質腫』(歯と骨を接続する部分に腫瘍(しゅよう)ができる病気)を抱えている」という内容だった。
この番組ではイ・ヨンハク容疑者一家に8坪(約27平方メートル)のチキン店を開業させてくれた。同容疑者は「我が娘よ、愛しているよ。お前のために一生懸命生きるよ」と涙をこぼした。開店初日には229万8000ウォン(約28万円)を売り上げた。
ところが、このチキン店は1年で閉店した。閉店の理由は分からない。その後、イ・ヨンハク容疑者は「娘の20年分の治療費を募りたい」と自転車で全国を一周して、米国でも募金運動をした。そのたびに報道機関は家庭の事情を伝えて支援金を集めた。
そのようにしてイ・ヨンハク容疑者は今年2月まで番組だけで10回以上も出演している。本紙も2008年に同容疑者が作った映像コンテンツを美談として紹介した。
こうした家庭事情が報道されるたび、イ・ヨンハク容疑者の個人の支援口座には入金があった。同容疑者は2010年、ある報道機関のインタビューで、「メディアに一度出れば700万ウォン(約70万円)入ってくる。記事1つで2000万ウォン(約200万円)支援をもらったこともある」と言った。
その金で外車を買い、高価な犬を飼った。報道を見て支援金を送った人々の善意にはそぐわないことだ。
報道機関がある人物の秘密にしたいことまですべて突き止めるのは容易ではない。またイ・ヨンハク容疑者の殺人容疑と報道機関の募金には直接関係がない。しかし、同容疑者一家の異常な行動に、報道機関は気づくこともできたはずだ。
妻は数百万ウォン(数十万円)のブレスレットを付けて番組に出演し、支援を要請した。駐車場に外車を駐車させながら、撮影時はタクシーに乗った。報道機関が周辺取材をしていたら、同容疑者の実生活を知ることができたはずだった。
だから、「報道機関は視聴者や読者の目を引くために『感動』を絞り出し、イ・ヨンハク容疑者一家の本当の姿から目をそらしたのではないか」という思いは消せない。「美談を商業化した」という批判の声も聞こえてくる。
報道機関が美談を報道する時、「ファクトチェック」(事実確認)が比較的おろそかになっていたのは事実だ。誇張しすぎて、かえってその意義を損なうという批判もある。
状況は全く違うが、株式投資で400億ウォン(約40億円)もうけて20億ウォン(約2億ウォン)寄付したと伝えられたパク・チョルサンさんの話は、このほど一部がうそだったと明らかになった。
パク・サンチョルさんは「400億ウォンと自ら言及したことはないが、はじめ報道機関に間違って伝えられ、その後もこれを訂正しなかった」と言った。彼の「偽りの美談」に対して報道機関には責任がないのだろうか? パク・サンチョルさんの寄付そのものは賞賛に値する行為だった。
心配なのは、今回の件で何の関係もない人が被害者になる恐れがあるということだ。福祉団体などには「募金をやめたい」という電話がかかっているという。
イ・ヨンハク容疑者の事件は、最近やっと定着し始めつつある「寄付文化」のためにも、報道機関がいっそう入念にファクトチェックをしなければならないことを示している。
社会部=ソン・ホヨン記者
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/10/20/2017102001733.html
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/10/20/2017102001733_2.html