韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、表に「庶民派のニコニコおじさん」が立ち、裏で陰惨な「親米派・保守派の壊滅作戦」を静かに進めている。その先行きは「右に戻れない体制づくり」であり、北朝鮮との統一とは別の次元で、「韓国型共産社会」を目指していると見るのが至当ではあるまいか。
文政権の発足から半年で、経済界はもはや「何も言わない集団」になった。政府の施策に異論を唱えたら、関係部署からさまざまな圧力があり、果ては「反省文」(自己批判書)の提出を強要されるからだ。
政権は来年から、公営企業について労組代表の理事を設ける法案を準備している。官庁エコノミストはかつて、野党・労組側からの「労組代表理事」提案に対して「企業の能率を損ねる」と強く反論していたが、政権が変わるや「民主化を進める良い制度だ」と賛成に転じた。「お国のため」よりは「わが身がかわいい」からだ。
公営企業に「労組代表理事」が定着すれば、いずれ民間企業の取締役会にも拡大する。労組のない企業には、表向きは何も言わないスタイルで、労組を誕生させるよう圧力を加えるだろう。
大統領府には従北派の学生運動のリーダーだった秘書官が、秘書室長以下10人もいることは8月10日付の本欄で紹介したが、首相の秘書官(市民社会担当=局長級)にも、国家保安法違反で2回服役している人物が起用されていることが明らかになった。
この人物は出所後、おそらく盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で、政府系の研究機関に入り身を潜めていた。きっと行政官レベルでは、相当数の元活動家がすでに入り込み、職位とは関係なく実権を振るっているのだろう。
12月には、それぞれの財閥が改革案を発表することになっている。もちろん、これも表向きは「財閥が自主的に」だが、裏では恫喝(どうかつ)のような圧力が働いている。
そして、1月からは最低賃金が15%アップする。それが人件費の玉突き引き上げにつながることは必至だ。
こうした施策のほとんどが国会を通さず、純行政レベルで進められていることに着目する必要がある。検察を含む行政の権限を表裏にわたって駆使することで、既成事実化していくのが文政権の手法だ。
「そんなことばかりしていたら、韓国企業は国際競争力を失い…」と言うのは、自由社会の発想にすぎない。
半島型朱子学を背後に持つ左翼にとっては、ある政策を実行することによる副作用よりも、「改革の大義」を貫徹することが重要なのだから。従って、「悪なる財閥を改革(=できることなら解体)すること」「労働者の声を生かすため労組代表を理事(取締役)にすること」「貧しい者をなくすため最低賃金を大幅に引き上げること」こそ大義なのだ。
文政権の中核は、国民世論の手前、「従北・反米志向」を隠している。そこで国民的抵抗のない反日を進める。「反日=日韓離反」であり、それは日米韓の安保構造をひび割れさせ、結果として「反米従北」になる。
文政権の6カ月で、韓国は「見知らぬ国」への道を歩み始めたのだ。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/171019/soc1710190010-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/171019/soc1710190010-n2.html