日本の排他的経済水域(EEZ)内などで外国漁船の違法操業が相次いでいる。水産庁は違法操業の疑いがある外国漁船の取り締まり強化のため、2018年度から最新鋭の取締船3隻を新たに投入、さらに日本海に配備している取締船1隻の後継船の建造にも着手し、全45隻の態勢とする方針だという。
18年度予算の概算要求では、関連予算を17年度当初予算比で6割増の207億円計上した。取締船はEEZ内での密漁や許可条件に反した漁船に対し、立ち入り検査や拿捕(だほ)などの権限を持つ。これにより、日本近海での中国や北朝鮮による違法操業に歯止めをかける考えだ。
漁業生産量を国別に見ると、1987年まで日本は長く世界一の座にあったが、88年に中国に抜かれ、その後、差はどんどん開いている。一昨年の統計ではインドネシア、米国、インド、ペルー、ロシアより下の7位にランクされている。日本の場合、漁師の跡継ぎが少なくなり、危険な海に出ていくことも望まれていない。
暖流と寒流の出合う日本近海には多種多様な魚が生息し、世界3大漁場の1つになっていて、中国やロシアなど一部の国とはEEZ内での操業条件を相互に決める政府間協定を締結している。しかし、中国漁船は多大な数に上っている。45隻程度の取締船投入では追いつかない。
韓国は勇ましく銃などを使って、黄海などで違法操業する中国漁船を脅かしている。しかし、日本はなかなかそこまでできない。このまま放っていたら、「漁業大国・日本」の看板を外すことにもなりかねない。
そこで例えば、日本の漁船とぶつかるような海域で操業している中国漁船に対し、国際免許のようなライセンスを与え、同時にすぐれた冷凍能力を持つ日本の漁船を貸して、獲れた魚を安く買い取る、というようなことをするのも一案だと思う。
青森県八戸港にはロシアの漁船が入ってきて、アリューシャン列島などで獲れた魚介を売っているが、あまり設備のいい船ではないので新鮮さに欠けている。日本の漁船を使えば、もっと新鮮なものが手に入れられるはずだ。
このようにして、したたかに日本の市場を守るべきだ。魚好きの日本人の胃袋を中心に考えるということだ。漁獲量の推移を見ると、そういうことをする時期にきているのではないかと私は思う。
太平洋の北海道・東北沖では、EEZの境界線付近の公海で中国や台湾の大型漁船がサンマを乱獲している。今月10日には恒例の「目黒のさんま祭り」がJR目黒駅前で開催されたが、いつもなら岩手・宮古で水揚げされたサンマが振る舞われるのに、今年は海水温の上昇などで記録的な不漁ということで、北海道根室市の7000匹のサンマを宮古市が買いつけて間に合わせたという。こういう状況を考えると、発想の転換も必要かなと思うのだ。
取り締まりに45隻、200億円の資金を投じるくらいなら、免許を与えた“外国人労働者(漁民)”に大量に漁獲してもらい、安い魚の安定供給を国策とする、くらいの発想が必要な時期にきているのではないか。
■ビジネス・ブレークスルー(スカパー!557チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170919/soc1709190002-n1.html