さぞや韓国はパニック状態だろう。フランスに続き、ウインタースポーツ強国のオーストリア、ドイツが2018年2月開催の平昌五輪辞退の可能性を示唆したからだ。核実験・弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮によって国際的な緊張感が高まる中、安全が保障されなければという条件つきだが、危険を冒してまでの参加を躊躇するのは国民を守るための判断としてはあり得るだろう。
開催国・韓国は不安の払拭に躍起となるべきところなのに、北朝鮮へ人道的支援と称して800万ドル(約9億400万円)相当の拠出を表明し、制裁を強める国際社会の流れに逆行すると厳しく非難された。韓国内でも野党がこの拠出を金正恩朝鮮労働党委員長と「共犯」などと追随した。文在寅政権は平昌五輪の成功が政権の至上命題とうたうが、このままでは失敗に終わりそうだ。
国連総会の一般討論演説で「北朝鮮を完全に破壊するほか選択肢はない」とドナルド・トランプ米大統領が警告した9月19日、韓国・文在寅大統領は米ニューヨークで国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と会談し、「五輪停戦」決議が予定通り11月13日に国連総会で採択されれば「北朝鮮が参加する場合は安全がさらに保障される」と強調し、採択へ協力を要請した。
五輪停戦決議とは、五輪やパラリンピックの期間中に国連加盟国による敵対行為の自制を求めるものだ。1994年のリレハンメル五輪に先立って採決されて以来、いずれの五輪でも採択されてきた。
ところが、IOCの理事には選手の身を案じて大会をボイコットする国が出てくる可能性を懸念する声が出ていたが、これが現実化しつつある。海外メディアによると、フランスのローラ・フレセル・スポーツ相が9月21日、北朝鮮の「状況が悪化し、安全が確保できなければ、フランス選手団はここにとどまる。選手団を危険にさらすことはない」と明言した。政府要人の発言だけに衝撃は計り知れない。
すると、翌22日、オーストリア五輪委員会のカール・シュトース会長が「状況が悪化し、自国選手団の安全が保障されなくなった場合、われわれは韓国には行かない」と追随。ドイツは治安当局が「適切な時期」に検討するとしたが、可否の予断は許さない。
オーストリアはこれまで冬季五輪のアルペンスキーで金34、銀39、銅41の計114個と世界最多のメダルを獲得するなど、ウインタースポーツの強国。ソチ五輪では金4、銀8、銅5だった。ドイツは金8、銀6、銅5を奪取し、フランスは金4、銀4、銅7を手にした。この3カ国で金16、銀18、銅17と相当数に上る。それだけに不参加した場合の痛手は深くなりそうだ。
韓国内では波紋が広がった。中央日報は1988年ソウル五輪の1年前に起きた大韓航空機爆破事件で安全に対する懸念が高まり、開幕まで安全に対する不安が問題視された経緯を紹介。各国選手団が日本で事前キャンプを行い、外国人観光客数も大きく予想を下回ったとした。
また韓国野党は、韓国政府が北朝鮮に人道支援と称して800万ドルの拠出を表明したことに反発。朝鮮日報によると、自由韓国党の院内代表は「国際社会が北朝鮮に対する軍事的オプションを検討するなど、北朝鮮へ制裁と圧迫を加えているのに文大統領だけが別の道を進んでいる。相変わらずの対話と平和の待望論に失望せざるを得ない」と批判。
同党の最高委員は支援策を即刻撤回しなければ「歴史と韓国国民は我々を殺そうとした金正恩委員長の『共犯』として記憶されるだろう」と激しい言葉を使って非難した。
文大統領は5月の大統領就任以降、平昌五輪へ北朝鮮を参加させる考えを繰り返し表明してきた。しかし、北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を断行し、国連安全保障理事会から制裁決議を受けている。最近も9月11日に石油輸出を3割減らすなどの9回目の制裁決議がなされたばかりだ。文大統領は一応、ミサイル発射に関する非難はするものの、持論である北朝鮮との対話に強い意欲を示すことを忘れない。
朝鮮日報は今年6月、北朝鮮においてスポーツは朝鮮労働党と金正恩氏の威信を高め、外部における統一戦線戦術を利用するための単なる政治的な手段に過ぎないと主張。
http://www.sankei.com/premium/news/171006/prm1710060004-n1.html
(>>2以降に続く)