北朝鮮の弾道ミサイルに対処する米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に反発する中国で反韓感情が高まり、韓国人を狙った犯罪が急増しているという。駐中国の韓国大使館は今月、中国国内の韓国人に対して身の安全に注意するよう呼びかけた。
経済的な報復も深刻になっているほか、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は7日付の社説で「韓国の保守主義者はキムチを食べて間抜けになったのか」などと子供じみた揶揄(やゆ)を掲載。これに韓国メディアが猛反発し、双方の中傷合戦にも発展している。
■韓国人への犯罪が急増
聯合ニュース(日本語電子版)によると、中国国内での韓国人の犯罪被害の急増は、国会外交統一委員会所属の与党議員が外交部から提出を受けた資料「在外国民の事件・事故被害の現況」で判明。昨年は1332件で、2015年の675件からほぼ2倍になっていた。
13年は598件、14年が574件と毎年500〜600件だった犯罪が急増しているのが分かる。昨年7月に韓国がTHAAD配備を決定し、中国は搭載レーダーで自国が監視されるとして猛反発。経済的な報復とともに反韓感情も高まったとみられる。
中央日報(同)によると昨年の犯罪被害を類型別にみると、窃盗が15年の203件から657件と3倍以上に増え、暴行傷害も15年の80件から106件に増えている。
THAADが4基追加配備されたことを受け、さらに状況が悪化する懸念があることから駐中国の韓国大使館は9月7日、中国国内の韓国人に対し、身辺の安全に注意を求める知らせを中国の無料メッセージアプリを通じて流すなど緊急措置を講じる事態になった。
■WTO提訴も
経済的な報復は深刻度を増している。
中央日報(同)に掲載された韓国経済新聞は、現代経済研究院がTHAADが実際に韓国に配備された3月以降、中国に進出した韓国企業の被害規模は年末までに8兆5千億ウォンに達すると予測していると報じた。
韓国産製品の輸出にも大きな影響があり、ハンギョレ新聞(同)によると、中国は輸入が大幅増加に転じた今年は、韓国産製品の輸入額だけ増加率が大幅低下し、「THAADへの報復以外にはこれを説明しにくい」という。
品目別に韓国製品の中国輸出額をみると、電機電子(部品)・鉄鋼・自動車(部品)を中心に輸出額がほとんど半減した。自動車部品は3月の3億2千万ドルから4月に2億300万ドルに減少し、7月には1億500万ドルになった。鉄鋼製品のうち輸出額が最も多い合金圧延は3月の5015万ドルから7月には2923万ドルへ。
電機電子部門ではカメラ・送信機の場合、3月の1億8491万ドルから毎月減り続け、7月には534万ドルに激減。1次電池・蓄電器は3月の3億3074万ドルから7月には2億3302万ドルになった。
この現状に対し、産業通商資源部の白雲揆(ペク・ウンギュ)長官は「慎重にアプローチするだろうが国際法違反の素地がある部分に対してはWTO(世界貿易機関)提訴も検討している」と語ったという。
■中韓メディアの中傷合戦
韓国がTHAADの追加配備を完了すると、環球時報は9月7日付の社説で「韓国の保守主義者はキムチを食べて間抜けになったのか」と激しい表現で韓国を非難したという。
これに対し、韓国メディアは一斉に反発した。朝鮮日報(同)は社説で「下品な非難を続ける態度は、習近平国家主席を頂点とする中国共産党指導部のレベルそのものだ」と指摘。
東亜日報も「習主席は、『中国が自由貿易を先導したい』と言う資格などない。国際社会に『不良国家』のイメージを植え付けて、信頼できない国というレッテルが貼られれば中国にも損になるだろう」と批判した。
中韓メディアによる中傷合戦も激しくなり、両国の国民感情をさらに悪化させているようだ。
2017.9.24 15:00
http://www.sankei.com/west/news/170924/wst1709240002-n1.html
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