北朝鮮の軍事的挑発がエスカレートする中、緊密に連携すべき米国と韓国の間で通商政策をめぐる確執が起きている。巨額の貿易赤字を理由に米韓自由貿易協定(FTA)の改定を求める米国と、かたくなに拒む韓国。一時はトランプ米大統領が協定破棄の検討に入ったと報じられ懸念が広がった。米国との経済対話を10月に控えた日本への影響を懸念する声もあるが、背景にはいかにも韓国らしい“悪癖”があるようで−。
「同盟の中核をなすFTAを破棄してはならない」
米議会上下院の幹部は5日、米韓FTA破棄に反対する共同声明を発表した。
朝鮮半島の緊張が高まる中で米韓が“通商戦争”を起こせば、北朝鮮を利するだけでなく、後見役として金正恩体制を支える中国やロシアに対し日米韓が結束して厳しい経済制裁を求めることも難しくなる。
ロイター通信によると、トランプ氏はこうした国内の声に配慮し、破棄の判断を先送りしたもようだ。
ただし、火種は残る。米韓FTAは2012年3月に発効したが、米通商代表部(USTR)は米国が16年に韓国とのモノの貿易で約276億ドル(約3兆円)の赤字を計上し、発効前の11年より赤字額が2倍超に増えたと主張。トランプ氏は米韓FTAを「おぞましい取引」と非難する。
8月にはソウルでFTAの扱いをめぐる初の特別会合が開かれたものの、米側が求める再交渉を韓国側が拒否し物別れに終わった。今後、トランプ氏が北朝鮮問題の推移を見つつ、どこまで強硬な手を打ってくるかに注目が集まっている。
なぜトランプ氏や米通商代表部(USTR)は米韓FTAにこだわるのか。通商筋は「韓国の約束破りに米国の議会や業界団体の不信感が高まっているためだ」と説明する。
米国はこれまで、韓国がFTAで約束した薬価の決定過程や公正取引委員会による調査の透明性確保、政府機関による海賊版ソフトウエアの使用禁止など、複数の分野で「協定が十分履行されていない」と批判してきた。韓国側は「約束は果たした」と反論するが、意見は食い違っている。
自由貿易交渉では双方の国益をかけて激しい議論が交わされるのが常だ。ただ、一度結んだ協定を順守せず、関税撤廃など市場開放の果実だけを得ようとすれば批判はまぬがれない。
鬱積した不満の上にトランプ政権が優先課題で掲げる「貿易赤字の削減」が重なり、韓国とのFTAが標的になったもようだ。既に米国の通商政策における米韓FTAへの関心度は「北米自由協定(NAFTA)再交渉や、中国の過剰生産問題に次ぐ3番目」(経済官庁幹部)まで高まっているとの指摘もある。
続きます。
2017.9.22 12:00
http://www.sankei.com/premium/news/170922/prm1709220011-n1.html
「同盟の中核をなすFTAを破棄してはならない」
米議会上下院の幹部は5日、米韓FTA破棄に反対する共同声明を発表した。
朝鮮半島の緊張が高まる中で米韓が“通商戦争”を起こせば、北朝鮮を利するだけでなく、後見役として金正恩体制を支える中国やロシアに対し日米韓が結束して厳しい経済制裁を求めることも難しくなる。
ロイター通信によると、トランプ氏はこうした国内の声に配慮し、破棄の判断を先送りしたもようだ。
ただし、火種は残る。米韓FTAは2012年3月に発効したが、米通商代表部(USTR)は米国が16年に韓国とのモノの貿易で約276億ドル(約3兆円)の赤字を計上し、発効前の11年より赤字額が2倍超に増えたと主張。トランプ氏は米韓FTAを「おぞましい取引」と非難する。
8月にはソウルでFTAの扱いをめぐる初の特別会合が開かれたものの、米側が求める再交渉を韓国側が拒否し物別れに終わった。今後、トランプ氏が北朝鮮問題の推移を見つつ、どこまで強硬な手を打ってくるかに注目が集まっている。
なぜトランプ氏や米通商代表部(USTR)は米韓FTAにこだわるのか。通商筋は「韓国の約束破りに米国の議会や業界団体の不信感が高まっているためだ」と説明する。
米国はこれまで、韓国がFTAで約束した薬価の決定過程や公正取引委員会による調査の透明性確保、政府機関による海賊版ソフトウエアの使用禁止など、複数の分野で「協定が十分履行されていない」と批判してきた。韓国側は「約束は果たした」と反論するが、意見は食い違っている。
自由貿易交渉では双方の国益をかけて激しい議論が交わされるのが常だ。ただ、一度結んだ協定を順守せず、関税撤廃など市場開放の果実だけを得ようとすれば批判はまぬがれない。
鬱積した不満の上にトランプ政権が優先課題で掲げる「貿易赤字の削減」が重なり、韓国とのFTAが標的になったもようだ。既に米国の通商政策における米韓FTAへの関心度は「北米自由協定(NAFTA)再交渉や、中国の過剰生産問題に次ぐ3番目」(経済官庁幹部)まで高まっているとの指摘もある。
続きます。
2017.9.22 12:00
http://www.sankei.com/premium/news/170922/prm1709220011-n1.html