還暦まで何年もあるのに白髪が増えたせいか、韓国で年寄りに見られることがある。バスで40代ほどの女性から何度か席を譲られ、街では若者から「オルシン(ご老体)どうぞ」とチラシを渡されたこともある。
ソウルの日本大使館前で抗議集会を取材していたとき、全景を見渡せる絶好の高さのブロックに登り、カメラを構えていたところ、「ハラボジ、ネリセヨ!(じいさん、降りなさい)」と若い警察官から注意された。
危険を心配してくれたのだが、韓国ではデモ集会で暴れる老人をよく見る。彼らと同類視されたのかと、複雑な思いだった。
自宅のマンションでは、上の階の主婦がこちらとすれ違うや、4〜6歳ほどの息子と娘に「あいさつしなさい。ハラボジ(おじいさん)に」と言い聞かせていた。知人の韓国人に一連の出来事を話すと、皆「好意的な言葉です」「敬意を持っている証拠」と言う。
韓国では近年、車内で高齢者に席も譲らず、ふんぞり返りスマートフォンをいじっている若者が目立つ。そんな世相にかかわらず、日本人の“じいさん”を気遣い、席を譲り、幼児まであいさつしてくれるとは。韓国の敬老精神はまだ残っている。
今では近所の子供からあいさつされると、「よろしい」といった具合に、余裕の表情でうなずき返している。(名村隆寛)
http://www.sankei.com/world/news/170907/wor1709070043-n1.html