韓国政府が、労働者のレジャー費用を支援するために、一人当たりの旅行経費10万ウォン(約9800円)を支援する「チェックバカンス制度」を推進する。
この「チェックバカンス制度」は以前の朴槿恵(パク・クネ)政権時に、テスト運用されたことがある。
政府と企業と従業員がレジャー費用を共同積立して使用する制度で、文化体育観光部(以下、文体部)が中小企業180社の従業員2500人余りを対象として旅行経費10万ウォンを支給。
参加企業にもそれぞれ10万ウォンの積立を義務化し、ここに従業員が各自20万ウォン(約1万9600円)を積立すると、旅行に行く際には企業分と政府からの給付金が上乗せされて、40万ウォン(約3万9000円)を活用することができるというシステム。
実施された2014年当時、政府は予算として2億5000万ウォン(約2450万円)を計上。もともとはフランスが1982年から実施している制度で、その「韓国版」というわけだ。
韓国ではこの制度のテスト運用の結果、対象の従業員は国内旅行によって政府支援金の5.4倍もの消費を行ない、経済的にもプラスとなったことが立証されている。 また、別のアンケートによると、利用者の8割近くがこの制度に満足していると明らかにしている。
しかし、参加企業の不足と予算問題などの理由で、翌年以降には中断されていた。
今年の春に行われた大統領選挙で文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「チェックバカンス制度」を公約に掲げ、再導入へと動き出した。今回議論された「チェックバカンス制度」に関しては、以前の制度を徹底的に分析し、新たな規約も盛り込まれている。
まず、以前より予算を大幅に拡大している。今回の関連予算には、2014年時の何十倍にもあたる500億ウォン(約49億244万円)があてられており、制度利用対象者も50万人に増加する見込みだ。
しかし、すべての企業が対象なわけではない。主に従業員数が1人以上〜300人未満の中小企業を対象とする、新たな規定も発表した。あくまで国内の経済促進を目的とするため、政府からの給付金は国内店舗でのみ利用できる「ポイントカード」形式で支給する。
政府は制度が生み出す観光・消費の効果を3600億〜4800億ウォン(約352億〜470億円)規模と想定している。
◆狙いは国内需要の活性化か
これは 一見、有給休暇を促し、給付金も受け取れる良好な制度ととらえられがちだが、単なる「バラマキ」だと不満の声も上がっている。
国家予算があてがわれているにも関わらず、この制度が適用されるのは会社員のみで、自営業には適用されない。同じ労働者という枠内で差別が生じているという批判だ。
また、企業側にとってもいい話ではない。韓国では長時間労働が当たり前だとされており、有給休暇をとることを快く思わない。
世界28カ国を対象に行った働き方に関する調査によると、韓国では1年のうちに15日ある有給休暇をわずか8日しか使用しないとして、6年連続で休暇取得率ランキングの最下位を記録している。
しかし、「チェックバカンス制度」によって、企業は従業員に積極的に休暇を与えなければならない。また、10万ウォンの積立を行うため、金銭的な負担も大きい。
したがって、制度への参加も指名でもしない限り、積極的に参加する企業はあまり見られないと予想されている。
2009年、日本でも国内に住民票がある全国民を対象に「定額給付金」が支給されている。当時、緊急経済対策の一環として実施された生活支援策で、国民一人当たりに支給された金額は1万2千円(65歳以上と18歳以下は2万円)。定額給付金のために計上した予算は総額2兆円規模。
政策の発表当時から「無意味なばらまき」だと批判されており、支給後にもその経済的効果には大きな疑問符が付いている。
現に内閣府が公開した「定額給付金に関連した消費に関する調査」結果を見ると、定額給付金が消費として利用された割合は、「100%」の支出がトップで50.0%であると同時に、「支出0%」つまり「利用していない」世帯も26.9%にのぼり第2位。国民の消費を促したとは言いがたい。
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(>>2以降に続く)