5000億ドル(約54兆6900億円)規模の世界の海運業界は昨年、運搬能力の過剰で韓国の韓進海運が経営破綻するなど、過去最悪の危機に陥ったが、それから1年で苦境を脱出した。
業界内の大型再編が進行中で、スニーカーやバナナ、バービー人形などを世界各地に運ぶ大型コンテナ船が一段と巨大化するのに伴い、これらの船舶を保有する企業規模も拡大。
生き残った企業は大きな規模の経済(スケールメリット)と需要拡大の恩恵を享受している。
大型再編が進行中
アジア最大の海運会社、中国の中遠海運(コスコ・シッピング・ホールディングス)は7月、競合する東方海外国際(オリエント・オーバーシーズ・インターナショナル)に対し60億ドル余りでの買収を提案。
東方海外国際は、全長がエンパイアステートビルの高さを超える世界最大のコンテナ船を保有する。
デンマークのAPモラー・マースクはドイツの競合会社の買収を進めている最中で、米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」1億8000万台を運搬できる船舶など、大型船を複数保有する。
海運データ提供会社アルファライナーによると、コンテナ船海運会社上位5社が世界市場の約60%を占めている。これら巨大海運会社は、製造業者やウォルマート・ストアーズ、ターゲットなど小売業者を相手に強大な価格決定力を行使。
用船料は上昇しており、アジア発の主要航路コンテナ運賃の指数は1年前からおよそ22%上昇した。
シンガポールの運輸調査会社クルーシャル・パースペクティブのコリン・ピン最高経営責任者(CEO)は「コンテナ船海運業界は今、大型で資金力のある企業だけが競合している。市場集中が進めば海運会社の価格決定力と交渉力が強まるだろう」と述べた。
同業界は昨年、供給(運搬能力)が需要を上回ったことから、各社の価格決定力は弱まり、利益率が低下。当時、世界有数の海運会社だった韓進海運は財政危機に陥り、8月に経営破綻した。
韓進海運の破綻は同業界を2008年にリーマン・ブラザーズの破綻で金融業界が危機に陥った際とほぼ同様の状況に追い込んだ。
信栄証券(ソウル)のアナリスト、ウム・キュンア氏は「韓進海運の破綻以降、業界では信用力の高い対象に投資が集まる『質への逃避』がより顕著になった。大型船舶を保有する上位数社の市場支配が進むにつれ、持たざる企業の衰退が著しくなっている」と指摘した。
巨大船舶の利用拡大は業況好転の鍵を握る。大型船舶を所有する企業は高い運賃の恩恵を享受するために、展開する船舶数を少なくし、1回の航行でより多くの荷物を運ぶことができるとウム氏は説明した。
同氏の見積もりでは、1万8000個以上のコンテナを輸送できる大型船舶は現在、全世界でおよそ58隻あり、2年でこの数は倍増すると見込まれる。新たな船舶のおよそ半数は大手海運会社が追加所有する見通しだ。
能力過剰解消せず
ただ、業界の成長を妨げてきた運搬能力過剰の問題は完全には解消していない。古い船舶がまだ残っている上に、大型船舶の新造で運搬能力の拡大が続いているからだ。
クルーシャル・パースペクティブによれば、コンテナ船海運業界の運搬能力の伸び率は今年が3.4%、来年は3.6%と予想される。
とはいえ、需要は順調に回復しているようだ。海運各社は昨年度は赤字を計上したものの、事業好転の兆候を捉えている。APモラー・マースクは5月の時点で、1〜3月期の終盤に向けて堅調な需要が見えてきたことを明らかにしている。
今月には中遠海運が、市況の改善に伴い17年上半期は1年前の赤字から約18億5000万元(約304億円)の黒字に転じるとの見通しを示した。
ジェフリーズ・グループの香港在勤アナリスト、アンドリュー・リー氏は先月の調査報告書で「17〜19年に世界の需要の伸びが供給の伸びを上回る」と予想している。
今年に入ってから、マースクや韓国の現代商船など複数の海運会社は、アジアから米国内のウォルマートやターゲットといった店舗に輸送する船荷の年間運賃を5月から引き上げることで各社顧客と合意に達した。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170828/mcb1708280500006-n1.htm
業界内の大型再編が進行中で、スニーカーやバナナ、バービー人形などを世界各地に運ぶ大型コンテナ船が一段と巨大化するのに伴い、これらの船舶を保有する企業規模も拡大。
生き残った企業は大きな規模の経済(スケールメリット)と需要拡大の恩恵を享受している。
大型再編が進行中
アジア最大の海運会社、中国の中遠海運(コスコ・シッピング・ホールディングス)は7月、競合する東方海外国際(オリエント・オーバーシーズ・インターナショナル)に対し60億ドル余りでの買収を提案。
東方海外国際は、全長がエンパイアステートビルの高さを超える世界最大のコンテナ船を保有する。
デンマークのAPモラー・マースクはドイツの競合会社の買収を進めている最中で、米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」1億8000万台を運搬できる船舶など、大型船を複数保有する。
海運データ提供会社アルファライナーによると、コンテナ船海運会社上位5社が世界市場の約60%を占めている。これら巨大海運会社は、製造業者やウォルマート・ストアーズ、ターゲットなど小売業者を相手に強大な価格決定力を行使。
用船料は上昇しており、アジア発の主要航路コンテナ運賃の指数は1年前からおよそ22%上昇した。
シンガポールの運輸調査会社クルーシャル・パースペクティブのコリン・ピン最高経営責任者(CEO)は「コンテナ船海運業界は今、大型で資金力のある企業だけが競合している。市場集中が進めば海運会社の価格決定力と交渉力が強まるだろう」と述べた。
同業界は昨年、供給(運搬能力)が需要を上回ったことから、各社の価格決定力は弱まり、利益率が低下。当時、世界有数の海運会社だった韓進海運は財政危機に陥り、8月に経営破綻した。
韓進海運の破綻は同業界を2008年にリーマン・ブラザーズの破綻で金融業界が危機に陥った際とほぼ同様の状況に追い込んだ。
信栄証券(ソウル)のアナリスト、ウム・キュンア氏は「韓進海運の破綻以降、業界では信用力の高い対象に投資が集まる『質への逃避』がより顕著になった。大型船舶を保有する上位数社の市場支配が進むにつれ、持たざる企業の衰退が著しくなっている」と指摘した。
巨大船舶の利用拡大は業況好転の鍵を握る。大型船舶を所有する企業は高い運賃の恩恵を享受するために、展開する船舶数を少なくし、1回の航行でより多くの荷物を運ぶことができるとウム氏は説明した。
同氏の見積もりでは、1万8000個以上のコンテナを輸送できる大型船舶は現在、全世界でおよそ58隻あり、2年でこの数は倍増すると見込まれる。新たな船舶のおよそ半数は大手海運会社が追加所有する見通しだ。
能力過剰解消せず
ただ、業界の成長を妨げてきた運搬能力過剰の問題は完全には解消していない。古い船舶がまだ残っている上に、大型船舶の新造で運搬能力の拡大が続いているからだ。
クルーシャル・パースペクティブによれば、コンテナ船海運業界の運搬能力の伸び率は今年が3.4%、来年は3.6%と予想される。
とはいえ、需要は順調に回復しているようだ。海運各社は昨年度は赤字を計上したものの、事業好転の兆候を捉えている。APモラー・マースクは5月の時点で、1〜3月期の終盤に向けて堅調な需要が見えてきたことを明らかにしている。
今月には中遠海運が、市況の改善に伴い17年上半期は1年前の赤字から約18億5000万元(約304億円)の黒字に転じるとの見通しを示した。
ジェフリーズ・グループの香港在勤アナリスト、アンドリュー・リー氏は先月の調査報告書で「17〜19年に世界の需要の伸びが供給の伸びを上回る」と予想している。
今年に入ってから、マースクや韓国の現代商船など複数の海運会社は、アジアから米国内のウォルマートやターゲットといった店舗に輸送する船荷の年間運賃を5月から引き上げることで各社顧客と合意に達した。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170828/mcb1708280500006-n1.htm