【ソウル=桜井紀雄、北京=藤本欣也】中国と韓国の国交正常化から24日で25年を迎えた。貿易額が33倍に伸びるなど深化してきた関係は、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備決定で一気に冷え込んだ。
共催の記念式典さえ開けず、国交正常化後、最悪といわれる関係が改善する見通しは立っていない。
中国の習近平国家主席と韓国の文在寅大統領は24日、祝電を交換した。文氏は「相互理解と信頼を深めた」と25年のプラス面を強調。
習氏は「意見の相違を適切に処理し、両国関係の安定的かつ健全な発展を希望する」と記した。中国が望む形でのTHAAD問題の処理を暗に求めたのだ。
習氏は7月の会談で文氏に「初心を忘れてはならない」と指摘したという。相互尊重の原則に基づいて国交を樹立したことを改めて強調し、文氏にTHAAD配備に慎重だった頃に立ち返れとクギを刺した形だ。
24日、ソウルでの式典には、韓国の康京和外相は訪露を理由に出席せず、林聖男外務第1次官が代理出席した。北京での23日の式典では、出席者が2012年の共催の式典の半数に満たず、国家副主席だった習氏が出席した5年前の華やかさは見る影もなかった。
冷戦終結後の1992年に国交を正常化した当時、約64億ドル(約7千億円)だった中韓の貿易額は昨年、約2114億ドルと33倍に拡大。中国は韓国にとって最大の貿易相手国となっている。
中国での韓流ブームがこれを後押しした。「韓国ドラマを見たことがない中国人はいない」といわれるほどだった。
だが、昨年7月のTHAAD配備決定で暗転した。配備地を提供した韓国ロッテグループは中国側に狙い撃ちされ、中国にあるロッテマート99店のうち87店が営業停止に追い込まれた。
今年3月中旬からは、中国側が韓国への団体旅行を事実上制限。3〜6月に訪韓した中国人旅行者は前年比6割も急減し、中国人客に依存してきた免税店などが大打撃を受けた。韓国の対中自動車輸出も低迷し、今年の貿易額が2千億ドルを割り込むとの予測もある。
就任前はTHAAD配備に慎重だった文氏も、7月末の北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射直後に全発射台の臨時配備を指示。これに対し、中国の王毅外相は康氏との今月6日の会談で「両国関係に冷や水を浴びせた」と強い不快感を示した。
韓国では年内の首脳会談開催も難しいとの悲観論が漂っている。
半導体など韓国の主力分野で中国との競合が増え、摩擦は不可避ともみられていた。韓国の専門家は、蜜月関係は“バブル”にすぎず、「THAADはそれをはじけさせるきっかけだった」と指摘している。
http://www.sankei.com/world/news/170825/wor1708250004-n1.html
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