【北京=西見由章】今月11日に中国山西省和順県の炭鉱で崩落事故が発生し、8人が死亡、1人が行方不明となった。ところが県政府は当初「死傷者はいない」と発表し、多数が生き埋めになったとネット上に書き込んだユーザーを拘束していた。
中国当局はネット上の「デマの取り締まり」を強化しているが、こうした規制が真実の告発を封殺するのに利用される危険性も浮き彫りとなった。
国営新華社通信などによると、同県にある露天掘りの炭鉱で11日午後に崩落事故が発生。12日にはインターネット上で「多数の死者が出た。県は情報を封鎖しようとしている」などの書き込みが相次いだ。
県側は13日「崩落の兆しがあったため現場は立ち入り禁止にしていた」などとして死傷者はいなかったとウェブサイトで明言。14日には死傷者に関して「事実と異なる」情報をネット上で広めたとして、警察当局がユーザー1人を拘束したことを明らかにした。
当局側の対応に疑念の声が強まり、騒動が大きくなったため、政府上層部が調査し、真相が明らかになった。事故処理を担当した県幹部が免職処分となったほか、拘束されたユーザーは釈放された。
国務院(政府)国家安全生産監督管理総局は20日、「企業が計画的、組織的に虚偽報告を行い、県政府も真剣に確認作業を行わなかった」と総括した。
中国では事故や天災が発生した際、犠牲者数などを隠蔽するケースが後を絶たない。遼寧省鞍山市は今月11日、2012年に同市を襲った台風災害による死者が実際は36人だったのに、死者・行方不明者8人として過少に発表していたとの調査結果を公表。
当時の副市長や県書記らが処分された。防災体制の責任追及を恐れて虚偽報告を行ったとみられる。
炭鉱事故の現場を多く取材した中国紙記者は「死者隠蔽は各地で日常的に行われている。明るみに出るのは氷山の一角にすぎない」と話している。
http://www.sankei.com/world/news/170821/wor1708210056-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170821/wor1708210056-n2.html