状況の緊迫が深刻度を増す北朝鮮問題ですが、単純に米朝間のブラフ合戦で危機感が高まっているとみなすよりは、東アジア全体の安全保障において、中国の台頭が南シナ海から極東まで広がった新たな外交ゲームの幕開けになったと考えた方がよいかもしれません。
北朝鮮という不思議な独裁国家単独の行方だけを見るのでは不十分です。問題の背景にあるのは核不拡散であり、地域安全保障の文脈の中で米中が鋭く対立する時代、アメリカの同盟国である日本はどのように立ち振る舞うべきか、という問いなのでしょう。
見識をもった人物が新聞を通じ解説を重ねることで、単に国民に正しい情報を知らせるだけでなく、情報の読み解き方、一つ一つのニュースが伝える意味や価値までをきちんと伝えることが求められていると言えましょう。
その点で、産経新聞のウェブ版「産経ニュース」の連載「世界を読む」は、非常に価値のある論考を積み重ねてきています。
重篤ながんを患いながらも満足な治療を受けられず、先月に志半ばで亡くなったノーベル平和賞受賞者の劉暁波さんをめぐって噴出した対中批判の短期間での沈静化と、
富と力によるパワープレーで世界を相手に外交を仕掛ける中国の現状を見事に解き明かした「中国に『ひざまずく』西洋、筆頭はノルウェー…劉暁波氏の死が炙(あぶ)り出した新しい世界の“対中規範”」(「産経WEST」14日)は、中でも出色の記事でした。
世界のパワーバランスは、もはや単なる人道的な規範や崇高な民主主義的価値観といった腹の膨れない能書きだけでは動かなくなってきている、という冷酷な事実の指摘です。
その中国が、アメリカをはじめとする英語圏や日本、欧州連合(EU)諸国といった国々が織りなす既存の枠組みに挑戦する具として北朝鮮問題を最大限に活用し、またサイバーセキュリティーや航空宇宙といった新たなる戦場で、アジア版モンロー主義的な主張をさらに強めていくであろうことは明白です。
国力の衰退や貧困の拡大にあえぎ始めた日本は、これからどのような補助線を引いて世界を見ていくべきなのか。新聞に求められる論考は、思想の保守・リベラルを問わず現実と事実に立脚した冷静で質の高いものである必要があるでしょう。
民主主義、国家からの自由、法の支配、市場経済といった普遍的価値を堅持しながら、日本が限られたリソースでどのような外交を行い、ほかの国家や社会よりも優れた部分を残して育成し、必要な国であると存在感を示していくのかは、まさに「世界を読む」必要があるのです。
単なる対米追従ではなく、価値観を共有し、未来にわたって何を誇りとし社会を築いていくのか、新聞が伝えるべきことはたくさん残されているように感じます。
◇
【プロフィル】山本一郎(やまもと・いちろう) 昭和48年、東京都出身。慶応大卒。専門は投資システム構築や社会調査。
http://www.sankei.com/column/news/170820/clm1708200006-n1.html
http://www.sankei.com/column/news/170820/clm1708200006-n2.html
山本一郎氏
北朝鮮という不思議な独裁国家単独の行方だけを見るのでは不十分です。問題の背景にあるのは核不拡散であり、地域安全保障の文脈の中で米中が鋭く対立する時代、アメリカの同盟国である日本はどのように立ち振る舞うべきか、という問いなのでしょう。
見識をもった人物が新聞を通じ解説を重ねることで、単に国民に正しい情報を知らせるだけでなく、情報の読み解き方、一つ一つのニュースが伝える意味や価値までをきちんと伝えることが求められていると言えましょう。
その点で、産経新聞のウェブ版「産経ニュース」の連載「世界を読む」は、非常に価値のある論考を積み重ねてきています。
重篤ながんを患いながらも満足な治療を受けられず、先月に志半ばで亡くなったノーベル平和賞受賞者の劉暁波さんをめぐって噴出した対中批判の短期間での沈静化と、
富と力によるパワープレーで世界を相手に外交を仕掛ける中国の現状を見事に解き明かした「中国に『ひざまずく』西洋、筆頭はノルウェー…劉暁波氏の死が炙(あぶ)り出した新しい世界の“対中規範”」(「産経WEST」14日)は、中でも出色の記事でした。
世界のパワーバランスは、もはや単なる人道的な規範や崇高な民主主義的価値観といった腹の膨れない能書きだけでは動かなくなってきている、という冷酷な事実の指摘です。
その中国が、アメリカをはじめとする英語圏や日本、欧州連合(EU)諸国といった国々が織りなす既存の枠組みに挑戦する具として北朝鮮問題を最大限に活用し、またサイバーセキュリティーや航空宇宙といった新たなる戦場で、アジア版モンロー主義的な主張をさらに強めていくであろうことは明白です。
国力の衰退や貧困の拡大にあえぎ始めた日本は、これからどのような補助線を引いて世界を見ていくべきなのか。新聞に求められる論考は、思想の保守・リベラルを問わず現実と事実に立脚した冷静で質の高いものである必要があるでしょう。
民主主義、国家からの自由、法の支配、市場経済といった普遍的価値を堅持しながら、日本が限られたリソースでどのような外交を行い、ほかの国家や社会よりも優れた部分を残して育成し、必要な国であると存在感を示していくのかは、まさに「世界を読む」必要があるのです。
単なる対米追従ではなく、価値観を共有し、未来にわたって何を誇りとし社会を築いていくのか、新聞が伝えるべきことはたくさん残されているように感じます。
◇
【プロフィル】山本一郎(やまもと・いちろう) 昭和48年、東京都出身。慶応大卒。専門は投資システム構築や社会調査。
http://www.sankei.com/column/news/170820/clm1708200006-n1.html
http://www.sankei.com/column/news/170820/clm1708200006-n2.html
![【新聞に喝!】北朝鮮も中国も振る舞いには背景がある…俯瞰して「世界を読む」分析を ブロガー・投資家、山本一郎[8/20] [無断転載禁止]©2ch.net YouTube動画>1本 ->画像>1枚](http://www.sankei.com/images/news/170820/clm1708200006-p1.jpg)
山本一郎氏