貿易をめぐり悪化する米中関係を前に、中国は対立解消に向けて事態収拾を目指している。一方で、トランプ米政権は中国による知的所有権(IP)侵害の疑いを調査する見通しで、そうなれば中国は報復措置を講じる可能性が高いことが関係者の話で分かった。
中国政府は3日、米政府が調査開始の準備を進める事案について、この疑惑を否定。中国商務省の高峰報道官は、IPに対する中国の「関心は高い」と表明し、米国との良好な協力関係を維持したいと述べた。
一方、中国は貿易紛争に備え、既に対抗策を準備している。関係者は、米国からの輸入を制限し得る品目としてまず大豆を挙げる。自動車や航空機、レアアース(希土類)も対象の可能性があるという。
中国の国営メディアは貿易上の措置がとられた場合、過去と同様に中国は対抗策で応じると示唆する。共産党最高指導層の交代を発表する5年に1度の党大会を今秋に控え、現指導部が国内向けに力を誇示する必要性はとりわけ高くなるからだ。
ユーラシア・グループのアジア太平洋担当マネジングディレクター、カラム・ヘンダーソン氏は「党大会を控え、中国は何としても貿易戦争を回避したいだろう。半面、この問題で中国が弱い姿勢をみせられないことも重要だ。このため中国は慎重で釣り合いの取れた対応に出るとみている」と話す。
米紙ニューヨーク・タイムズはこのほど、トランプ政権が通商法301条に基づき米通商代表部(USTR)に調査を命じる検討をしていると報じた。同条項によると、米大統領は外国の不公正な貿易慣行から自国産業を保護するため関税を課すことができる。
だが、米側がリスクの高い貿易戦争を積極的に仕掛けるかは疑問が残る。国際通貨基金(IMF)は先月、内向きの政治は世界経済の回復を阻害しかねないと警告した。
在上海米国商工会議所のケネス・ジャレット会頭は「中国は貿易での報復を行った長い歴史がある。今回はそうならないと信じる理由はないだろう」と話す。
マイケル・フロマン前USTR代表は3日、ブルームバーグ・テレビとのインタビューで「米国が世界貿易機関(WTO)を経由せずに貿易紛争を解決しようと一方的な行動をとれば、他国は米国に報復するだろう。米国をまねて国際協定などはお構いなしに独断的な措置を取るはずだ」と述べた。(ブルームバーグ Kevin Hamlin)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170805/mcb1708050500011-n1.htm
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170805/mcb1708050500011-n2.htm
7月19日、ワシントンで開かれた米中包括経済対話について会見に応じる左からムニューシン米財務長官、中国の汪洋副首相、ロス米商務長官(AP)