米ニュージャージー州のトランプナショナルGCで7月16日(現地時間)まで行われた、第72回全米女子オープン。逆転優勝を飾ったのは、韓国の23歳、パク・ソンヒョンだった。
ソンヒョンと優勝争いを演じたのは、同じく韓国選手のチェ・ヘジン。チェ・ヘジンはまだ17歳の高校3年生アマチュアである。惜しくも、2打差で2位に終わったが、最終日はトップスタートで、一時は50年ぶりのアマチュア優勝、最年少優勝の期待が膨らんだ。
2017年の全米女子オープンで優勝した韓国のパク・ソンヒョン選手。大会上位10人のうち、8人を韓国勢が占めて圧倒的な強さだった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
世界を席巻する韓国女子ゴルフ
上位10人のうち、韓国勢は実に8人を占めた。これは、どう考えても驚くべき比率の高さだろう。全米女子オープンを韓国選手が制したのは1998年の朴セリ以降、9度目。圧倒的な韓国選手の強さである。
一方、日本選手はまだその頂点に立っていない。米国LPGAで17勝し、賞金女王にもなった岡本綾子が1987年に2位に入ったのが最高位である。この試合に勝つことを夢にしてきた宮里藍は2009年、2011年の6位が最高でタイトルに手が届いていない。韓国選手の強さの秘密は何であろうか。
日本でも7月末時点で20戦のうち9回韓国選手が優勝している。全米女子オープンが開催されているのと同じ週に、日本で開かれていたサマンサタバサ・レディースでは、現在韓国ツアー賞金ランキングで2位につけるキム・ヘリムが日本ツアー初参戦初優勝。3日間でボギー1つの圧倒的に安定したプレーだった。
実はキム・ヘリムの憧れのプレーヤーがアニカ・ソレンスタムと上田桃子。上田桃子が活躍している日本のLPGAの試合をテレビで見て、そのアグレッシブなプレーとファッショナブルなスタイルに憧れたという。
最終日、同じ組で回ったその上田桃子は韓国選手の強さについて「若いのにスキがない。理にかなったスイングをしていて、パットがまたうまい」「次から次へと、強い若手が出てくる」とインタビューに答えた。
優勝会見で筆者はキム・ヘリムに、韓国選手はなぜ強いか、と質問した。「韓国選手は日本人選手より、球が飛ぶと思います」それが、キムの答えであった。何人もの日本人選手を相手に戦ってきた彼女の率直な感想なのだろう。
日本ツアーで活躍し、今は韓国選手キム・ハヌルのマネジメントをしているキム・エースク氏が昨年、日本ゴルフジャーナリスト協会のタウンミーティングで韓国選手の強さについて語る機会があった。
キム氏は韓国選手だけでなく、日本人選手のマネジメントもしているので、その違いを明確に理解している。その中でキム氏が最初に言ったことは、朴セリの影響の大きさだ。
「1998年に全米女子オープンで朴セリが優勝した。その時期、韓国経済は厳しい状況でIMF(国際通貨基金)から介入を受けていて、米国に勝ったことが韓国国民に勇気を与えた」のだという。
「それを見て朴セリに憧れた『朴セリキッズ』世代である、申ジエ、イ・ボンミなどが今の韓国を強くしている。さらに2009年に申ジエが米国LPGAで賞金女王になり、それを見ていた子供たちが活躍し始めている」(キム氏)。つまり、世界No.1になった選手が出たことが、大きな飛躍のきっかけになったということだ。
7月16日まで、茨城県で行われていたサマンサタバサレディースで優勝した、キム・へリム選手。キム選手が憧れる選手の1人が、上田桃子選手だという(筆者撮影)
韓国選手の強烈な「世界ナンバーワン」志向
さらに、キム氏は韓国の国民性についても触れた。「国を背負って戦うことはおカネ以上に名誉なことだと誇りを持っている。そして、競争社会で1番になる志向が強く、特に世界で1番になることを目指している」。
http://toyokeizai.net/articles/-/182855
(>>2以降に続く)
ソンヒョンと優勝争いを演じたのは、同じく韓国選手のチェ・ヘジン。チェ・ヘジンはまだ17歳の高校3年生アマチュアである。惜しくも、2打差で2位に終わったが、最終日はトップスタートで、一時は50年ぶりのアマチュア優勝、最年少優勝の期待が膨らんだ。
2017年の全米女子オープンで優勝した韓国のパク・ソンヒョン選手。大会上位10人のうち、8人を韓国勢が占めて圧倒的な強さだった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
世界を席巻する韓国女子ゴルフ
上位10人のうち、韓国勢は実に8人を占めた。これは、どう考えても驚くべき比率の高さだろう。全米女子オープンを韓国選手が制したのは1998年の朴セリ以降、9度目。圧倒的な韓国選手の強さである。
一方、日本選手はまだその頂点に立っていない。米国LPGAで17勝し、賞金女王にもなった岡本綾子が1987年に2位に入ったのが最高位である。この試合に勝つことを夢にしてきた宮里藍は2009年、2011年の6位が最高でタイトルに手が届いていない。韓国選手の強さの秘密は何であろうか。
日本でも7月末時点で20戦のうち9回韓国選手が優勝している。全米女子オープンが開催されているのと同じ週に、日本で開かれていたサマンサタバサ・レディースでは、現在韓国ツアー賞金ランキングで2位につけるキム・ヘリムが日本ツアー初参戦初優勝。3日間でボギー1つの圧倒的に安定したプレーだった。
実はキム・ヘリムの憧れのプレーヤーがアニカ・ソレンスタムと上田桃子。上田桃子が活躍している日本のLPGAの試合をテレビで見て、そのアグレッシブなプレーとファッショナブルなスタイルに憧れたという。
最終日、同じ組で回ったその上田桃子は韓国選手の強さについて「若いのにスキがない。理にかなったスイングをしていて、パットがまたうまい」「次から次へと、強い若手が出てくる」とインタビューに答えた。
優勝会見で筆者はキム・ヘリムに、韓国選手はなぜ強いか、と質問した。「韓国選手は日本人選手より、球が飛ぶと思います」それが、キムの答えであった。何人もの日本人選手を相手に戦ってきた彼女の率直な感想なのだろう。
日本ツアーで活躍し、今は韓国選手キム・ハヌルのマネジメントをしているキム・エースク氏が昨年、日本ゴルフジャーナリスト協会のタウンミーティングで韓国選手の強さについて語る機会があった。
キム氏は韓国選手だけでなく、日本人選手のマネジメントもしているので、その違いを明確に理解している。その中でキム氏が最初に言ったことは、朴セリの影響の大きさだ。
「1998年に全米女子オープンで朴セリが優勝した。その時期、韓国経済は厳しい状況でIMF(国際通貨基金)から介入を受けていて、米国に勝ったことが韓国国民に勇気を与えた」のだという。
「それを見て朴セリに憧れた『朴セリキッズ』世代である、申ジエ、イ・ボンミなどが今の韓国を強くしている。さらに2009年に申ジエが米国LPGAで賞金女王になり、それを見ていた子供たちが活躍し始めている」(キム氏)。つまり、世界No.1になった選手が出たことが、大きな飛躍のきっかけになったということだ。
7月16日まで、茨城県で行われていたサマンサタバサレディースで優勝した、キム・へリム選手。キム選手が憧れる選手の1人が、上田桃子選手だという(筆者撮影)
韓国選手の強烈な「世界ナンバーワン」志向
さらに、キム氏は韓国の国民性についても触れた。「国を背負って戦うことはおカネ以上に名誉なことだと誇りを持っている。そして、競争社会で1番になる志向が強く、特に世界で1番になることを目指している」。
http://toyokeizai.net/articles/-/182855
(>>2以降に続く)