「北のICBM」暴走とめる方法はあるか 「日米韓」に「中ロ」を加えよ
7月28日の深夜、北朝鮮は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の2回目の試射に成功した、と世界に向けて発表した。軍事専門家は「アメリカの首都ワシントンに届く飛行能力がある」と分析する。
もしアメリカ国内に核ミサイルが落ちれば、世界中が危機に陥る恐れがある。この危機をどう乗り越えればいいのか。7月30日付に一斉に掲載された新聞各紙の社説を読み解きながら、考えてみたい――。
朝日社説は書き出しから“中ロ”に注文
「中国とロシア」というタイトルに「北朝鮮の抑制に動け」との見出しを付けるのは朝日新聞の社説である。
「いまの事態を本当に憂慮しているのなら、北朝鮮の友好国である中国とロシアは具体的な行動をもって、最大限の努力を尽くすべきである」と冒頭から中国とロシアに明確な注文を付ける。「中国とロシア」というタイトルを付けているだけある。
さらに「ICBMの発射は今月4日に続き2回目とされる。今や射程は1万キロ超ともいわれ、脅威はアジアにとどまらない」と書き、そのうえでこう指摘していく。
「大量破壊兵器の開発に国力を注ぐ金正恩(キムジョンウン)政権の異常さに国際社会は憤りを募らせている」
「ところが国連安保理の動きは鈍い。最初の発射への対応についても意見がまとまっていないのは憂慮すべき事態だ」
「国際社会が声をひとつにして北朝鮮に反対姿勢を示せない責任は、中国とロシアにある」
中国とロシアに責任があるとの論の展開である。かつて共産圏の中国や旧ソ連を賛美した朝日新聞のスタンスとは真逆である。時代が変われば全てが変わる。当然かもしれないが、そこを深く考えることが大切だとこの沙鴎一歩は思う。
なぜ中国に対して明確な批判をしないのか
話を朝日社説に戻す。
ロシアに対しては具体的に「貨客船『万景峰(マンギョンボン)号』の定期航路を開くなど、ロシアは最近、北朝鮮との関係を強めている。安保理で米国などがめざしている新たな制裁決議についても、反対の立場を変えていない」と指摘し、
「もしロシアが北朝鮮への影響力を対米外交の駆け引きに利用するならば、常任理事国として無責任というべきだ」と厳しく批判する。
また中国には「中国外務省はきのう、ミサイル発射について『安保理決議と国際社会の普遍的な願いに背いた』と非難した。確かに中国は北朝鮮への締め付けを強めてはいる。2月には北朝鮮の主要な外貨獲得手段である石炭の輸入を止めた」と書いたうえで、
「だが、中国の税関によると、今年上半期の北朝鮮への輸出は前年に比べて30%近く増えた。中国側は禁輸リスト外の貿易と主張するが、統計上は近年、輸出がないとされる石油を、実際にはどの程度供給しているのかも明らかにすべきだろう」と指摘する。
朝日社説のロシアへの批判は分かりやすいが、中国への指摘は何を言いたいのかよく分からない。朝日には、中国に対して明確な批判ができない事情でもあるのだろうか。
「自国優先主義」が国際社会を硬直化
後半で朝日社説は北朝鮮に対し、こう主張している。
「北朝鮮はかつて、中国と旧ソ連の間を行き来する『振り子外交』を繰り返した。大国の力を利用して打開策を探りつつ、結局は自主路線を強め、現在のいびつな体制を作り上げた」
「北朝鮮が本当に危機感を抱くのは、日米韓に中ロが加わり、行動をともにする時である。核とICBMは国際社会全体を脅かす以上、中ロも安保理の新たな決議に同調すべきだ」
中国とロシアを含めた国際社会が、1つになって北朝鮮にものを言う。なるほどとは思うが、現実はそう動かない。各国とも外交では自国の利益を最優先するからである。
対北での朝日と読売の微妙な違い
読売新聞の社説も「国際社会による圧力強化に向けて中国とロシアは責任を果たさねばならない」と中国とロシアに注文を付けるものの、「圧力強化」という言葉を使う。
http://president.jp/articles/-/22730
(>>2以降に続く)