米通商代表部(USTR)は7月の議会報告書で、中国の経済システムによって鉄鋼・アルミ市場を中心とした世界経済に生じた「ゆがみ」と闘うと表明した。ブルームバーグが同報告書を入手した。
報告書の中でUSTRは自らの主な目的について、ダンピング(不当廉売)や企業への不正な補助金への対抗措置として、米政府が中国に報復関税を課す正当性を擁護することにあると説明。市場原理に基づかない中国の経済システムが米国の労働者や産業に打撃を与えていると指摘した。
上院金融委員会と下院歳入委員会向けにまとめられた同報告書は
「例えば鉄鋼・アルミの国際市場は現在、大幅な供給過剰の状態にあり、その主因は中国の過剰かつ不経済な生産能力にある。米国内および世界的な販売価格の抑制や外国市場における米輸出品の排除など、供給過剰は深刻な市場のゆがみをもたらしている」と分析した。
今回の中国に対する厳しいメッセージは、世界1、2位の経済国である米中両国がワシントンで開いた閣僚級の包括経済対話が貿易不均衡の問題で合意できなかったことが背景にある。
トランプ大統領は先週、鉄鋼の輸入制限をめぐる判断は差し迫ったものではないと示唆。一方で、米商務省は鉄鋼・アルミの輸入が国家安全保障の脅威に相当するかどうか調査している。
オックスフォード・エコノミクスのアジア経済責任者、ルイス・クイジス氏(香港在勤)は
「トランプ政権下で米中関係はこれまでのところ、思いもよらず落ち着いていたが、両国が矢継ぎ早に措置を講じることで米中関係の劇的かつ急速な悪化を招くリスクがある。このリスクは現実のものだ。トランプ氏が不満を吐き出すかもしれないし、一方の中国は国内向けに『強い』政府を誇示する必要があるかもしれない」と語った。
中国政府は同国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」として認定しない米国の見解に異議を唱えている。中国を「非市場経済国」と位置づけることで、米国はダンピングと不当な補助金に対抗して報復関税を課すことができる。(ブルームバーグ Andrew Mayeda)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170802/mcb1708020500020-n1.htm
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170802/mcb1708020500020-n2.htm
ライトハイザー米通商代表。USTRは7月の議会報告で、中国経済の「ゆがみ」と闘う姿勢を示した(AP)