東南アジア諸国連合(ASEAN)への加盟を目指して国造りを急ぐ東ティモールで、中国の存在感が高まっている。
2002年の独立当時は主要な社会基盤は日本の政府支援で整備されてきたが、近年は中国政府の援助が急増中。影響力はどこまで浸透しているのか、現場を歩いた。【ディリで平野光芳】
首都ディリから東に延びる国道1号線。車1台がすれ違うのがやっとで、至る所で道路の拡幅工事をしていた。日本政府から約53億円の低利融資(円借款)を受け行っている。
工事の基点付近には、JICA(国際協力機構)のロゴや日本国旗があしらわれた案内の看板が目に付いた。一方、沿道には中国人労働者専用の宿舎や食堂など8棟のプレハブがあり、中国と東ティモールの国旗が並んで掲げられていた。
「これは中国企業のプロジェクトだ」。ちょうど休憩中だった地元出身の重機オペレーターの男性(19)に声をかけると、こう言い切った。
近所に住む主婦のアレクサンドリナ・デゼススさん(32)に日本政府援助だと知っているか尋ねると、「現場で中国人を毎日のようにみかけるので、中国の計画だと思った」と驚いていた。
錯覚した理由は、工事を落札した土木会社が、中国国営「中国水電」だったからだ。東ティモールは政府援助の国際ルールに従って、ひもつき援助と批判されないよう競争入札で発注先を決めた。
この結果、価格競争力のある中国企業が殺到。日本企業は1社も入札に参加しなかった。
中国水電の現場担当者によると、約49キロの区間の整備のために本国から約70人の職員を派遣。40人以上が現場監督として数百人の東ティモール人労働者を指揮しているという。
中国企業の活躍は大規模プロジェクトでも目立つ。ディリ中心部にある大統領宮殿に入ると、「消火栓」という漢字が目に飛び込んできた。09年に完成した宮殿は、中国の無償資金援助で中国企業が建設。外務省や防衛省の本館庁舎も中国による援助という。
オーストラリアのローウィ国際政策研究所によると、東ティモールへの海外援助(06年以降)は国別では豪州が突出して多く約8億ドル(約883億円)。
中国は日米よりも少ない5200万ドルにとどまるが、中国企業が中国人労働者とともに進出しているため、住民へのインパクトが強い。
地元NGO「ベルン」の広報担当ヴィラト・ソアレス氏は「中国政府が自国の進出企業に有利になるよう東ティモール政府に圧力をかける恐れがある」と懸念を示した。
ただ、中国の経済的影響力が高まっても、南シナ海の権益問題では、東ティモールは過度に中国寄りになることはないとみられている。
隣国オーストラリアと天然ガスなどの権益を争っている東ティモールは、両国の中間線に基づき権益を主張する豪州に対し、昨年4月に国連海洋法条約に基づき仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)に調停を申請。
「法に基づく正義」を強調しており、判決を受け入れずにフィリピンと外交交渉を続ける中国の姿勢とは一線を画す。
あるASEAN外交筋はこう断言した。「東ティモールは自由と民主主義、法の支配を重視し、日本と価値観を共有している。ASEAN加盟は日本にも有利に働く」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170801-00000101-mai-int
日本の円借款協力で拡張工事が行われている東ティモールの国道1号線=ディリ郊外で、平野光芳撮影
2002年の独立当時は主要な社会基盤は日本の政府支援で整備されてきたが、近年は中国政府の援助が急増中。影響力はどこまで浸透しているのか、現場を歩いた。【ディリで平野光芳】
首都ディリから東に延びる国道1号線。車1台がすれ違うのがやっとで、至る所で道路の拡幅工事をしていた。日本政府から約53億円の低利融資(円借款)を受け行っている。
工事の基点付近には、JICA(国際協力機構)のロゴや日本国旗があしらわれた案内の看板が目に付いた。一方、沿道には中国人労働者専用の宿舎や食堂など8棟のプレハブがあり、中国と東ティモールの国旗が並んで掲げられていた。
「これは中国企業のプロジェクトだ」。ちょうど休憩中だった地元出身の重機オペレーターの男性(19)に声をかけると、こう言い切った。
近所に住む主婦のアレクサンドリナ・デゼススさん(32)に日本政府援助だと知っているか尋ねると、「現場で中国人を毎日のようにみかけるので、中国の計画だと思った」と驚いていた。
錯覚した理由は、工事を落札した土木会社が、中国国営「中国水電」だったからだ。東ティモールは政府援助の国際ルールに従って、ひもつき援助と批判されないよう競争入札で発注先を決めた。
この結果、価格競争力のある中国企業が殺到。日本企業は1社も入札に参加しなかった。
中国水電の現場担当者によると、約49キロの区間の整備のために本国から約70人の職員を派遣。40人以上が現場監督として数百人の東ティモール人労働者を指揮しているという。
中国企業の活躍は大規模プロジェクトでも目立つ。ディリ中心部にある大統領宮殿に入ると、「消火栓」という漢字が目に飛び込んできた。09年に完成した宮殿は、中国の無償資金援助で中国企業が建設。外務省や防衛省の本館庁舎も中国による援助という。
オーストラリアのローウィ国際政策研究所によると、東ティモールへの海外援助(06年以降)は国別では豪州が突出して多く約8億ドル(約883億円)。
中国は日米よりも少ない5200万ドルにとどまるが、中国企業が中国人労働者とともに進出しているため、住民へのインパクトが強い。
地元NGO「ベルン」の広報担当ヴィラト・ソアレス氏は「中国政府が自国の進出企業に有利になるよう東ティモール政府に圧力をかける恐れがある」と懸念を示した。
ただ、中国の経済的影響力が高まっても、南シナ海の権益問題では、東ティモールは過度に中国寄りになることはないとみられている。
隣国オーストラリアと天然ガスなどの権益を争っている東ティモールは、両国の中間線に基づき権益を主張する豪州に対し、昨年4月に国連海洋法条約に基づき仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)に調停を申請。
「法に基づく正義」を強調しており、判決を受け入れずにフィリピンと外交交渉を続ける中国の姿勢とは一線を画す。
あるASEAN外交筋はこう断言した。「東ティモールは自由と民主主義、法の支配を重視し、日本と価値観を共有している。ASEAN加盟は日本にも有利に働く」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170801-00000101-mai-int
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日本の円借款協力で拡張工事が行われている東ティモールの国道1号線=ディリ郊外で、平野光芳撮影