北朝鮮が米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を次々と成功させ、来年にも実戦配備に乗り出すという「悪夢のシナリオ」は、もはや不可避の情勢だ。
トランプ米政権がこれまで以上に危機感を募らせる中、米軍高官からは北朝鮮への「軍事行動」を検討するよう唱える声が高まってきた。
「軍事的な対応の選択肢についても話し合った」
米軍が28日に発表した、ダンフォード統合参謀本部議長とハリス太平洋軍司令官、韓国軍の李淳鎮(イ・スンジン)合同参謀本部議長との電話会談に関する声明は、今回の危機で北朝鮮に対する軍事行動の可能性に公式に言及した異例の内容となった。
対北朝鮮で「あらゆる選択肢を排除しない」とするトランプ大統領は国防総省に対し、北朝鮮問題の外交的解決が困難となった場合に備えて軍事行動の選択肢を用意するよう指示した。同省は既に複数の作戦案を提出済みとされる。
一方で米軍当局者は、米政権の現時点での正式方針である「外交による平和的解決」に矛盾しないよう、「命令さえあれば実行の準備はできている」(ハリス司令官)としつつも、軍事行動を自ら主張することは慎重に避けてきた。
しかし、7月4日に北朝鮮が米本土に到達可能なICBM「火星14」の発射に成功したのを機に、状況は一変した。米軍の現役将官が次々と軍事的選択肢を行使する可能性について公然と語り始めたのだ。
ダンフォード氏も今月22日にコロラド州で開かれた安全保障関連の会合で「多くの人が軍事的選択肢を『想像できない』と言うが、北朝鮮に核兵器を(米本土に)撃ち込む能力を持たせる事態こそが想像できない」と指摘した。
一方、ティラーソン国務長官は28日の声明で「国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の維持・強化」を改めて打ち出した。
米政府は、核・ミサイル開発資金などの流入を断つため、北朝鮮と取引のある中国企業への追加制裁を来週にも実施する方針だ。
米軍高官による一連の「主戦論」発言は、「第二次朝鮮戦争」で半島が大混乱に陥るのを恐れる中国を揺さぶり、北朝鮮に圧力をかけるように仕向ける意図も込められている模様だ。
同時に、米軍が対北戦略の柱の一つとしてきた「ミサイル防衛体制の強化」が、北朝鮮のICBM技術の急速な進展に対応しきれなくなる恐れが出ていることも、軍事攻撃論の背景にあるとみられる。
しかし、米本土の国民を核の脅威から守る代償として、甚大な犠牲が避けられない朝鮮半島での「悲惨な戦争」(ミリー米陸軍参謀総長)の火ぶたを本当に切ることができるのか。トランプ政権の手詰まり感は深刻だ。(ワシントン 黒瀬悦成)
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